九州大学病院のがん診療

肺がん

Q&A

  • 肺がんとはどのような病気ですか。
    がんは異常な細胞が過度に細胞分裂してできる腫瘍です。これが肺にできたものを肺がんと言います。がん細胞の形によって肺がんは大きく小細胞がんと非小細胞がんに分けられ、さらに非小細胞がんは腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんに分けられます。また、病気の拡がりによって早期(1期、2期)、局所進行期(3期)、進行期(4期)に分けられます。
  • 肺がんになったら、どのような症状がありますか。
    肺がんによる症状としては、せき、たん、血たん、発熱、胸の痛みなどが多く見られますが、症状だけでは他の呼吸器の病気と区別がつきません。また、他のがんと同じように肺がんが進むと体重が減少し、全身がだるく感じたり、食欲がなくなるなどの症状がみられます。早期の状態では症状が出にくく、検査をしないとわからない場合もあります。
  • タバコを吸うと、なぜ、肺がんになるのでしょうか。
    タバコの煙にはたくさんの発がん物質が含まれています。喫煙によってそれらの発がん物質が肺に入ると多くの遺伝子が傷つき、がんが発生しやすくなると言われています。
  • 禁煙するためにはどうすればいいですか。
    まずは禁煙する意志が重要であることは言うまでもありません。喫煙習慣はニコチンに依存している状態と関係があるので、この喫煙習慣から抜け出すためにニコチンパッチやニコチンガムなどを使ったニコチン代替療法が有効とされています。最近ではこのほかに新しい禁煙補助薬も出ています。
  • 肺がんの予防や検診について教えて下さい。
    肺がんを予防する方法としては禁煙が最も有効です。このほかには明らかに予防効果がある方法はわかっていません。検診を行うことで肺がんが早期に見つかる場合があります。日本では胸のレントゲン検査により肺がんを見つける方法が行われています。また、これに追加して痰の中に混じっているがん細胞を顕微鏡で調べる検査が行われています。
  • 肺がんの検査方法について教えて下さい。
    肺がんが疑われる場合は、まずレントゲン検査やCT検査を行って肺の中のどこに病気があるのかをはっきりさせます。また、リンパ節が腫れていないか、胸に水がたまっていないかなど病気の拡がりを確認します。肺がんと診断するにはカメラ(気管支鏡)を使ったり、胸の外から針を刺して病気のある場所から細胞や組織を採取し、顕微鏡でよく調べる必要があります。
  • 検診で肺がんの疑いがあると言われました。どうしたら良いでしょうか。
    まず肺がんかどうかをはっきり診断するために、呼吸器内科や呼吸器外科、あるいは腫瘍内科を受診してください。そこで必要な検査を行い、本当にがんであるのかどうか、そしてもし肺がんであった場合は、どのような治療法を選ぶのが最もよいかを主治医と相談してください。
  • 肺がんにはどのような治療法がありますか。
    肺がんの治療法には大きく分けて、手術療法、放射線療法、化学療法(抗がん剤を使った治療)があります。一般的に、早期の肺がんでは手術が行われますが、より進行した状態では放射線治療や化学療法が行われます。肺がんの種類や進みぐあいによってこれらの治療法を組み合わせて治療を行うこともあります。
  • 肺がんの手術はどのようなことをするのですか。
    肺は右肺が3つの部分(上・中・下葉)、左肺が2つの部分(上・下葉)に分かれています。それぞれの部分を肺葉と呼びます。がんができた肺葉と転移の可能性のある周囲のリンパ節を切除するのが標準的な手術です。従来は胸を大きく切開して手術を行っていましたが、最近では内視鏡を使うことにより、以前より小さな傷で手術できることも多くなってきました。
  • 手術をした後も日常の生活はできますか。
    手術を行う前に肺の機能を正確に評価して手術を行いますので、術後も日常生活に大きな支障が出ることは少ないですが、切除範囲が大きかったり、手術前から肺の機能が低下している場合は動いた時の息切れが出ることもあります。術後に痛みが残る場合がありますが、その時は痛み止めの薬で痛みをおさえるようにします。
  • 肺がんの手術をした場合、出血はどのくらいですか。
    肺がんの標準的手術(肺葉とリンパ節の切除)を行った場合の平均的な出血量は200ミリリットル程度です。通常、輸血を必要とすることはありません。患者さんのがんの進行の程度や血管の異常などによって、まれに1~2リットル出血することもあり、その場合は輸血を必要とします。
  • 肺がんの手術後、どのくらいで退院できますか。
    肺がんの標準的手術を行った場合の当院での術後入院期間の平均は10日前後です。手術後に胸の中に胸腔ドレーンという管が3~4日間ほど入りますが、この管が抜ければ退院できます。
  • 肺がんの手術の危険性はどのくらいですか。
    今日では肺がんの手術は安全に行われるようになりましたが、まれに生命にかかわる重篤な合併症が生じることがあり、結果的に退院できないまま亡くなることがあります。その割合(術後在院死亡率)は全国集計では0.9%です。この数値はあくまで、すべての患者さんの平均値ですので、若くて他に病気のない方では0に近く、高齢でいろいろな病気を抱えている方では数%になります。
  • 抗がん剤による肺がんの治療法にはどのような方法がありますか。
    肺がんの細胞の種類、遺伝子変異の状況、免疫関連分子の発現状況によって、分子標的治療薬、免疫療法、抗がん剤など使用される薬は変わります。
  • 肺がんを放射線で治療することはできますか。
    非小細胞肺がんでは手術で切除が難しい病期3期には放射線治療に抗がん剤を同時に使って治療するのがもっとも有効な治療法です。早期(1期、2期)の患者さんでも、手術を希望されない方、何らかの理由(心臓や肺の障害やその他の合併疾患)で手術が困難な方に対しても放射線治療が有効な場合があります。最近では1期の非小細胞肺がんに対しては、病巣を多方向からねらい打ちする定位放射線治療(いわゆるピンポイント照射)を行うことができ、従来の放射線治療に比べて短期間の治療で良好な成績が得られています。
  • 小細胞肺がんはどうやって治療しますか。
    非常に早期の場合には手術を行います。肺がんが放射線を照射できる範囲にとどまっている場合は、放射線と抗がん剤を組み合わせて治療を行います。この範囲を超えてがんが拡がっている場合は抗がん剤だけで治療を行います。また、転移による症状を和らげる目的で放射線治療を行うことがあります。
  • 肺がんの分子標的剤とは何ですか。
    がんの増殖や悪性化の原因と考えられているがんに特徴的な遺伝子や蛋白質を標的として開発されたお薬を、分子標的治療薬と言います。そのため、従来の抗がん剤に比べて副作用の種類が異なっています。