九州大学病院のがん診療

大腸がん

Q&A

  • 大腸がんの検診方法について教えてください。
    一次検診として、公費の補助により、便潜血検査が広く行われています。専用の容器に少しだけ便を入れて提出し、便に血液が混じっていないかを検査します。この検査で陽性と診断されると、二次検診として大腸内視鏡検査や注腸X線検査を行います。
  • 便に血がついていました。どうしたら良いでしょうか。
    痔の可能性もありますが、大腸癌や腸炎などの病気かもしれません。大腸内視鏡検査や注腸X線検査による精密検査を受けましょう。
  • 大腸にポリープがあると言われました。検査は何年に一度必要ですか。
    ポリープは「腫瘍」と「それ以外のもの」に分けられます。「それ以外のもの」の大部分は放置しても癌化することはありません。一方、「腫瘍」は良性と悪性に分けられます。悪性のものは「がん」で、治療が必要となります。良性のものは「腺腫」と呼ばれ、大腸ポリープの大部分を占めますが、この腺腫の中のほんの一部が癌になると考えられています。しかしどのような腺腫が大きくなり、癌化していくかということについては未だ不明な点が多く、大きくなるスピードもポリープによりまちまちです。このため、どれくらいのペースで検査を受ければよいかという質問に対する明確な答えはありませんが、少なくとも2-3年に1度は検査を受けた方が良いでしょう。
  • 大腸のポリープを内視鏡で取る場合、どのようにしますか。
    大腸ポリープを内視鏡で切除する方法には「ポリペクトミー」と「内視鏡的粘膜切除術(EMR)」があります。ポリペクトミーは内視鏡の先端からスネアと呼ばれるワイヤーを出し、これをポリープの茎や付け根にかけ、高周波電流で切除する方法です。一方、EMRは平坦なポリープなどに用いる方法で、内視鏡の先端から注射針を出し、ポリープの下にある粘膜下層というところに食塩水を注入します。この処置で盛り上がりの強くなったポリープにスネアをかけ、ポリペクトミーと同様に切除します。いずれの方法でも切除したポリープは回収して、詳しい組織検査を行います。
  • 大腸がんにはどのような治療法がありますか。
    大腸癌に対する治療には、内視鏡による治療、外科的手術、化学療法(抗癌剤による治療)などがあります。内視鏡治療は、内視鏡的に病変を摘除する方法で、原則としてリンパ節へ癌細胞が転移している可能性がほとんどなく、腫瘍が一括で切除できる大きさと部位にあるものに対して行われます。病変に茎部がある場合には、茎の部分にスネアをかけて通電し、切除します(ポリペクトミー)。病変が平坦な形の場合には、病変の下に生理食塩水などの液体を注入して挙上させ、スネアをかけて通電、切除します(内視鏡的粘膜切除術、EMR)。EMRで一括に切除できない広い病変に対しては、電気メスを用いて病変を含んだ組織を切開剥離する方法(内視鏡的粘膜下層剥離術、ESD)が行われる事があります。リンパ節への転移の可能性がある、または、内視鏡的に切除できない癌に対して、外科的手術が行われます。術式は、癌のできた部位や深達度(癌が大腸の壁のどの部分(深さ)まで及んでいるか)、リンパ節転移の程度などを考慮して決められます。手術で切除できない癌や手術後の補助療法として、化学療法が行われます。また、直腸癌に対して、手術の補助療法として放射線療法が行われる事があります。癌で大腸が狭くなり通過障害が起こった際に、人工肛門や腸のバイパスを作る手術が行われる事があります。また、痛みなどの症状がある場合には、それを和らげる治療を行います。
  • 大腸内視鏡で早期癌と診断されたのですが、どのような治療法がありますか。
    大腸がんが表面の粘膜までの深さで大きさも小さければ、通常内視鏡的又は経肛門的に切除(取り除くこと)が可能です。早期癌でもがんが粘膜より深く粘膜下層まで達している場合は10~30%程度のリンパ節転移がありますので、手術によりがんとリンパ節を切除することが必要になります。
  • 大腸がんの手術はどのようなことをするのですか。
    大腸がんそのものの切除(取り除くこと)と、がんが転移している又は転移している可能性があるリンパ節を切除します。リンパ節は大腸の壁と血管に沿って存在するため、がんを含めて20cm程度の大腸と血管の走行する脂肪組織(腸間膜)を切除します。がんが肛門に近くない場合は、切り取った大腸の端と端をつなぎ合わせます。
  • 腹腔鏡手術はどのような手術ですか。
    お腹を大きく切って手術をするかわりに、ガスでお腹を膨らませて腹腔鏡(内視鏡)で観察しながら小さな穴から入れた細くて長い器具(鉗子)を用いて手術を行います。傷が小さく手術後の痛みが少ない・身体への負担が少ない・回復が早い等の利点がありますが、技術を要するため外科医のトレーニングが必要です。
  • 大腸がんの手術後、どのくらいで退院できますか。
    それぞれの患者さんの全身状態と術後経過にもよりますが、腹腔鏡手術であれば術後1週間前後に、開腹手術では通常10日前後で自宅退院が可能です。
  • 手術の後遺症はありますか。
    通常の大腸がん手術ではほとんど後遺症はありません。しかし、直腸がんの手術では場合によっては、排尿障害や男性の場合は性機能障害などが考えられます。
  • 直腸がんだと人工肛門になりますか。
    肛門に近い部位に発生した直腸癌でも、人工肛門を極限まで造らない手術法を選択する場合があります。この治療の選択にあたっては直腸癌の位置と深さによって慎重に判断いたします。人工肛門を造る場合と造らない場合の長所・短所を説明いたしますので、ご自分の生活スタイルでどちらを希望するか選んでいただくことも可能です。
  • 大腸がんの化学療法にはどのような方法がありますか。
    比較的症状が少なく、日常生活を過ごせている方であれば、通常は2ー3種類の抗がん剤と分子標的薬剤を組み合わせて治療を行います。一回の治療では48時間続けて注射を行い、これを2週間毎に繰り返します。左右いずれかの胸の皮膚の下に、「静脈ポート」という注射用の小さな器具を埋め込み、これを通して薬の注射をする場合が多いです。この場合は、治療の初日だけ病院の外来においでいただき、注射薬を静脈ポートにつないだまま、後は自宅で過ごすことができます。