九州大学病院のがん診療

前立腺がん

Q&A

  • 前立腺がんの自覚症状にはどのようなものがあるのですか。
    初期の段階では、ほとんど症状はありません。早期がんを発見するためには、血液中のPSAを測定することが大切です。がんが進行して、尿道を圧迫すれば尿が出にくいなどの症状が出ますし、骨に転移すれば、その部位の疼痛が出現します。
  • 前立腺がんの危険因子について、または予防法について教えてください。
    危険因子として、高齢、食事(脂肪の多い食事、緑黄色野菜の不足)、遺伝、人種などが指摘されています。2親等以内に前立腺がんの患者さんがいる場合は危険度が2-5倍に増えるので、40歳代からPSA検査を受けることを勧めます。予防法として特に明確なものはありませんが、バランスのとれた食事、健康的な生活スタイルを心がけるとよいでしょう。
  • 前立腺がんの検査にはどのようなものがありますか。
    PSA検査、直腸診、前立腺エコーでがんが疑われた場合は、前立腺の針生検(針を刺して組織を採取する検査)を行って診断します。がんと診断されたら、CT、MRI、骨シンチなどで、がんがどこまで広がっているのかを調べます。
  • PSA検査とはどのような検査でしょうか。
    PSAは前立腺特異抗原(prostate specific antigen)の頭文字をとった略号です。採血で血中の濃度を測定します。非常に優れた前立腺がんの腫瘍マーカーですが、がん以外でも前立腺肥大症や炎症で上昇することがあります。また、がんと診断された後は、治療効果をみる指標としても使用されます。
  • 前立腺肥大症と前立腺がんは関係がありますか。
    前立腺肥大症と前立腺がんは全く違う病気です。前立腺肥大症は、尿道周囲の前立腺が大きくなり、尿が出にくいとか頻尿になる良性の腫瘍です。前立腺がんは前立腺から発生する悪性腫瘍ですが、時々肥大症と合併することもあります。
  • 前立腺がんの治療には、どのような治療がありますか。
    治療は、根治を目指すものとして、手術(根治的前立腺摘除術)、放射線治療(外照射と組織内照射)があります。また、男性ホルモンを抑えることでがんをおとなしくする内分泌療法も広く行われています。ホルモン抵抗がんには抗がん剤治療などもあります。
  • 前立腺がんの手術療法について教えてください。
    手術として、根治的前立腺摘除術が行われます。開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット支援手術がありますが、手術の内容はほぼ同じです。合併症として出血、尿失禁、性機能障害などがありますが、失禁はほとんどの例で術後3-6カ月で改善しています。2014年にロボット支援手術が保険適応となり、急速に広がり、現在の標準治療となりました。ロボット支援手術は、出血や疼痛が少なく回復が早いといわれています。
  • 前立腺がんの内視鏡手術、ロボット支援手術について教えて下さい。
    腹腔鏡手術をさらに進化させたものとして、ロボット支援手術が可能で、2014年に保険で承認されました。腹部に8~12mmの穴を6箇所くらい開けて行う手術で、開放手術に比べて傷が小さく、痛みが少ない、出血が少ないことが特徴です。また、腹腔鏡手術と比べると、狭い骨盤の中で、繊細な操作が可能で、縫合も容易にできることがその長所となります。九州大学病院では保険適応前から、先進医療として多数の手術を行ってきています。
  • 前立腺がんの放射線療法について教えてください。
    放射線には、外から照射する外照射と、放射線を発する線源を埋め込む内照射(密封小線源療法)があります。外照射は外来通院治療が可能ですが、1カ月半程度、土日を除く毎日の通院が必要です。また、密封小線源療法は1週間程度の入院が必要です。ともに、副作用として、下痢、直腸肛門出血、頻尿などがあります。
  • 前立腺がんの内分泌療法(ホルモン療法)について教えてください。
    前立腺がんは男性ホルモンによって増えるという性質があるため、男性ホルモンを抑えるホルモン治療が広く行われています。注射薬または精巣を摘出する手術や内服薬で治療が行われています。放射線治療の前後に補助的な効果を期待してホルモン治療を行うこともあります。転移がある場合はホルモン治療が第一選択となりますが、後でホルモン治療が効かなくなる去勢抵抗性前立腺癌が出現することもあります。去勢抵抗性前立腺癌に対しても、新しいホルモン治療薬や、抗がん剤、骨転移を標的にした薬など多くの新薬が使えるようになりました。