九州大学病院のがん診療

頭頸部がん

放射線治療

頭頸部がんの治療では癌を治すことと共に、機能や形態を温存し生活の質を守ることが重要となります。放射線治療は、嚥下や発声などの機能や、臓器の形態、整容性(外見)を温存することが可能な治療方法です。放射線単独で治療を行うこともありますが、癌の発生部位や病期に応じて、治療効果を高めるために抗がん剤を併用することが多いです。癌を手術で切除した後に、再発のリスクを低減するために、追加治療として放射線治療(術後照射)を行うこともあります。

当院では、リニアックという機械を用いて三次元原体放射線治療、IMRT強度変調放射線治療)や、定位(ピンポイント)放射線治療などの高精度放射線治療を実施しています。頭頸部領域には、視神経、脳、嚥下に関わる筋肉、唾液腺など、放射線の障害により生活の質に関わる副作用が出現する可能性のある臓器が密集しています。IMRTは、腫瘍へ放射線を十分量照射しながら、隣接する正常臓器の線量を低減することが可能な照射技術で、治療効果を担保しながら副作用を低減することが可能です。当院では病状に応じて積極的にIMRTを実施しています。

放射線治療の準備として、専用のCT画像撮影が必要で、このCT画像をもとにした三次元治療計画を行い、患者さんごとに最適な治療範囲や線量分布を決定しています。治療は、1回約10-20分で、1日1回、月曜日から金曜日まで週に5回行います。放射線照射そのものに痛みや熱さを感じることはありません。治療期間は治療部位や病状によって異なりますが、根治的治療の場合は70Gy(グレイ)を35回に分割し7週間で、術後照射の場合は50-60 Gyを25-30回に分割して5-6週間で治療することが多いです。痛みや出血といった癌による症状を緩和する目的で、20-30 Gyを5−10回に分割し1-2週間で治療を行うことも可能です。また、安全に治療を行うため、CT画像撮影の際や放射線治療時は専用の固定マスクを装着していただきます。

放射線治療の副作用は、代表的なものとして皮膚炎、粘膜炎、口腔内乾燥症状、味覚低下が挙げられますが、治療範囲や患者さんの状況によって予想される副作用も異なりますので、治療開始前に十分ご説明致します。また、副作用が出現した場合は、症状を軽減し安全に治療が進められるよう十分にサポート致します。

用語解説
病期 : 疾病の経過をその特徴によって区分した時期
IMRT : 強度変調放射線治療。腫瘍の形状に合わせた線量分布を形成することで、正常組織の被ばく線量をより低減し腫瘍部分に集中的に照射することができる照射方法
強度変調放射線治療 : 腫瘍の形状に合わせた線量分布を形成することで、正常組織の被ばく線量をより低減し腫瘍部分に集中的に照射することができる照射方法
定位(ピンポイント)放射線治療 : 治療用の放射線を多方向から病巣に対して集中し、正常組織の障害を少なくした放射線の治療方法
高精度放射線治療 : 定位放射線治療、強度変調放射線治療のこと
CT : コンピュータ断層法。身体の横断断層を撮影する特殊なX線装置