九州大学病院のがん診療

肺がん

外科的治療

肺がんに対する標準的な手術は、がんが存在する肺葉(右肺は上葉・中葉・下葉、左肺は上葉・下葉)のいずれかの切除、および周囲のリンパ節を取り除くことです。これを、「肺葉切除およびリンパ節郭清」と呼びます。最近の臨床研究で、2cm以下の小さな腫瘍でリンパ節転移がない患者さんにおいては、区域切除や部分切除といった縮小手術を行っても、肺葉切除と比較して長期予後が低下しないとの結果が報告され、上記のような患者さんには、積極的に縮小手術を行うようになってきています。また、患者さんの状況によって(心臓や肺の機能が良くない場合やがんが多発している場合など)、肺葉切除が困難な場合は、縮小手術を行うことがあります。

一方、がんが進行した状態で発見された場合は、手術を行う前に、化学療法(抗がん剤治療)や化学放射線療法を行って手術を施行する場合もあります。がんの進展により肺葉切除だけでは取り切れない場合は、片方の肺を全部取り除く肺全摘術が必要な場合があります。また、周囲臓器へ直接進展している場合は、周囲臓器と一緒に取り除く合併切除を行うことがあります。

通常、手術は全身麻酔で行います。リンパ節転移のない早期の癌に対しては、胸腔鏡というビデオカメラを使って、小さな切開(最大の傷が4cmほど、その他に2cmほどの傷が2〜3カ所)のみで行う完全胸腔鏡下手術を標準手術にしています。また、最近は手術支援ロボットを使用した手術も積極的に行っており、肺癌患者さんの約三分の一はロボット支援手術をおこなっています。大きな腫瘍やリンパ節が腫れている場合などは開胸手術(8〜12cmほどの傷)で行います。九州大学病院では、上記の標準手術を行った場合の手術後の入院期間(自宅退院まで)の平均は約7〜10日となっています。

退院後、手術で切除した肺がんの病理組織検査の結果をみて、最終的な病期(がんの進行具合)を診断します。この結果で、手術だけでは不十分と思われる場合(病期がIA3期以上の場合など)は、手術後に再発予防を目的とした化学療法を手術後1~2ヶ月を目途に開始します

用語解説

化学療法 : 化学物質によってがんや細菌その他の病原体を殺すか、その発育を抑制して病気を治療する方法
化学放射線療法 : 抗がん剤と放射線を組み合わせて行うがんの治療方法
病期 : 疾病の経過をその特徴によって区分した時期