九州大学病院のがん診療

縦隔腫瘍

内科的治療

胸腺腫・胸腺癌

手術や放射線治療などの局所治療の適応がない場合や、局所治療後に再発した場合は、化学療法が検討されます。具体的な化学療法の内容については、まだ研究段階にあり、標準的治療が確立されていないのが現状です。胸腺腫の場合、一般的にはシスプラチン、ドキソルビシン、ビンクリスチン、サイクロフォスファミドの4剤を組み合わせたADOC療法が汎用されていますが、この他にカルボプラチンとパクリタキセルを組み合わせた治療法の報告があります。
胸腺癌の場合、カルボプラチンとパクリタキセルを組み合わせた治療法が標準的に用いられます。この治療の効果がなくなった場合、分子標的薬であるレンバチニブの効果が最近確認され、新たな治療薬として用いられるようになりました。

縦隔胚細胞性腫瘍

縦隔原発の胚細胞性腫瘍は、奇形腫セミノーマ、非セミノーマに大別されますが、いずれも稀な疾患であるため、各治療法を十分に検討した大規模臨床試験はなく、標準的な化学療法は確立されていません。

1)奇形腫
基本的に外科的切除が選択されますが、周囲の臓器に進展して完全切除出来ない例もあります。不完全切除の場合はシスプラチンを中心とした化学療法を行うこともありますが、明らかな有効性を示す治療法は今のところないのが現状です。

2)セミノーマ
シスプラチンを使用した化学療法を先行させるのが一般的です。シスプラチン、エトポシドの2剤を組み合わせたEP療法や、これにブレオマイシンを加えたBEP療法が広く行われています。化学療法後に手術を行うこともあります。

3)非セミノーマ
シスプラチンを中心とした上記BEP療法や、ブレオマイシンの代わりにイホスファミドを用いたVIP療法が行われていますが、その効果はセミノーマほど高くはありません。化学療法後に手術を行うこともあります。

用語解説
胸腺腫 : 成人になって退化した胸腺の細胞から発生する腫瘍。良性胸腺腫と悪性胸腺腫とに分類される
化学療法 : 化学物質によってがんや細菌その他の病原体を殺すか、その発育を抑制して病気を治療する方法
胚細胞性腫瘍 : 精子や卵子になる前の細胞から発生した腫瘍の総称。良性腫瘍と悪性腫瘍がある
奇形腫 : 胚細胞腫瘍のひとつで良性に分類される腫瘍
セミノーマ : 精上皮腫。精巣に発生する悪性腫瘍