九州大学病院のがん診療

胃がん

院内がん登録情報

2018年から2022年の間に胃がんの診断を受けて九州大学病院で治療を開始された症例は、1,005例であり、この患者さんに対して九州大学病院で行った治療方法について、作成されたグラフを用いて説明します。
図1は、胃がん取り扱い規約に従って、臨床病期:ステージ(治療開始前の病期の進行度)ごとに分類したものです。両期間とも最も早期の胃がんであるステージIA(がんが粘膜内または粘膜下組織内にあり、リンパ節転移のない状態)が全体の73%を占めており、胃がん患者さんの多くが早期がんの状態で発見されていることがわかります。
図2は胃がん発見の経緯をステージ別にみたものですが、がん検診・健康診断・人間ドックを契機に診断された症例のうち、85%以上がステージⅠであり、胃がんの早期発見には検診が重要であることが分かります。
ステージ別治療法をみると(図3)、ステージⅠであれば5割から6割は内視鏡のみで治療されています。ステージⅡおよびⅢの治療法は、手術のみ、あるいは手術+薬物治療が大部分を占め、手術が中心的な治療であることが分かります。一方、ステージⅣでは薬物治療のみの割合が大部分を占め、手術よりも薬物治療が中心となります。
図4は、九州大学病院で治療を行った症例のステージごとの生存率を表しています。ステージが進むにつれて、完治が困難になることが分かります。このことからも、胃がんを根治するためにはやはり早期発見が重要であると考えられます。

用語解説
病期 : 疾病の経過をその特徴によって区分した時期

胃 2018-2022年症例のうち癌腫のみ(悪性リンパ腫、肉腫等を除く)治療前・取扱い規約ステージ(胃癌取扱い規約第15版)

取扱い規約について集計を行った。
※症例20:自施設で診断され、自施設で初回治療を開始(経過観察も含む)
 症例21:自施設で診断され、自施設で初回治療を継続(経過観察も含む)
 症例30:他施設で診断され、自施設で初回治療を開始(経過観察も含む)
 症例31:他施設で診断され、自施設で初回治療を継続(経過観察も含む)
※図4の生存曲線は全生存率として集計(がん以外の死因も含む)

図1 ステージ別症例数(症例20、21、30、31)

図2 ステージ別発見経緯(症例20、21、30、31)

図3 ステージ別治療法(症例20、21、30、31)
※重複あり

図4 Kaplan-Meier生存曲線(胃)