九州大学病院のがん診療

食道がん

診断

食道癌の診断は、内視鏡検査やX線造影検査による食道癌の広がりや深さの評価と、CTPET-CT検査などによるリンパ節や遠隔臓器への転移の評価により行います。これらの検査により総合的に判断することで適切な治療法を選択します。

食道癌の病変部評価

上部消化管内視鏡検査はがんの診断や発見に重要な検査です。壁深達度が粘膜および粘膜下層までにとどまる食道表在癌では、約85%の症例で内視鏡検査が発見の契機となっています。また、これらの食道がん患者の半数以上は発見時に症状を有しておらず、定期的な内視鏡検査が食道がんの早期発見に重要です。また、内視鏡検査において診断精度を上げる様々な工夫がなされています。例えば、ルゴール液撒布はヨード・グリコーゲン呈色反応を応用したもので、正常食道粘膜とは異なりグリコーゲンを有さない食道がんの部分は不染帯として認識されます(図1)。他にも特殊な光を当てることにより粘膜表面の毛細血管や微細模様を強調表示し、毛細血管の形状を判定することで、癌の壁深達度が推測できます(図1)。超音波内視鏡検査は食道がんの壁深達度評価や食道周囲リンパ節腫大や周囲臓器への浸潤の有無も評価することができます。
食道X線造影検査は造影剤(通常はバリウム)を飲んで、食道に存在する病変の形状や部位を評価する方法です。X線検査は、食道がんの食道での広がりや手術方法を検討するためにも有用な検査といえます。また、気管あるいは気管支浸潤が疑われるような場合に瘻孔形成の有無の評価、あるいは癌のために食道が狭窄し胃側への内視鏡挿入が困難な場合に狭窄部より胃側の状態の確認などができます。

リンパ節・遠隔臓器への転移の評価

リンパ節や遠隔臓器への転移の有無については、超音波検査、CTないしMRI検査、骨シンチグラフィー、あるいはFDG-PET検査などを用いて総合的に評価します。FDG-PET検査は、ブドウ糖に近い成分の検査薬(FDG)を血管に注射した後に、PETカメラで全身へのFDGの分布を撮影する検査法です。これは、癌細胞が正常な細胞よりもブドウ糖を取り込むほど活動が活発であるという特徴を利用したもので、癌が全身にどの程度広がっているかを判定することができます。リンパ節や遠隔臓器への転移の情報が適切な治療方法には重要になります。

用語解説

CT : コンピュータ断層法。身体の横断断層を撮影する特殊なX線装置
PET : がん細胞だけに集積する検査薬を体内に取り込み専用の装置で体を撮影する画像診断法
超音波内視鏡 : 超音波診断装置を伴った内視鏡
瘻孔形成 : 炎症などによって生じた体の組織の穴。栄養補給などのために、人工的に作る場合もある
超音波検査 : 超音波を当て、反射する反射波を画像処理し臓器の状態を調べる検査
MRI : 強い磁石と磁気を利用して体の内部を検査する機器
骨シンチ : 骨に集積する薬剤を静注後、シンチカメラで全身および局所のイメージを撮影する核医学画像検査