九州大学病院のがん診療

食道がん

院内がん登録情報

2018年から2022年に九州大学病院を初発で受診され、当院で初回の治療を受けた食道がんの患者さんは654例(扁平上皮癌640例、腺癌24例)です。UICC
のTNM分類に従うと、食道がんの進行度(ステージ)はステージ0からステージⅣBに分類されています。九州大学病院の食道がん(扁平上皮癌)の院内がん登録では、当院で実施された治療内容が進行度別に集計されています(図1)。

ステージ0、Ⅰ、Ⅱの食道がんは、がん検診・健康診断・人間ドック等で発見される割合が20%前後ありますが、ステージⅢ、Ⅳでその割合は減少します。一方、ステージが上がると自覚症状による受診・その他・不明の割合が増えています(図2)。

ステージ0(がんが食道の粘膜内にとどまるもの)の症例は44例であり、その多くは内視鏡的治療が実施され、一部に抗がん剤や放射線による治療や手術が行われています(図3)。ステージIでは、内視鏡的治療と手術が主に実施され、患者さんによっては、抗がん剤治療や放射線治療も実施されています(図3)。ステージ0とⅠの一部は内視鏡的治療の適応で、内視鏡的治療のみでがんを治すことができる可能性があります。ステージⅡ、Ⅲの患者さんは、ステージⅠまでと比べると進行した状態であり、手術や抗がん剤治療や放射線治療が行われています(図3)。ステージⅣA、ⅣBでは、がんの転移が広がっているために、手術が行われる症例は少なくなり、大半の患者さんに抗がん剤と放射線による治療が行われています(図3)。食道腺癌は症例数が少ないですが、ステージ0、Ⅰでは、内視鏡的治療が行われる症例があり、ステージⅡ以上では手術あるいは化学療法で治療されています。扁平上皮癌と違い放射線治療の症例はありませんでした。

図4は、ステージごとの生存曲線を示しています。縦軸が生存割合、横軸が治療後の時間(単位は月)です。ステージが進むにつれ、治療後の生存率が段階的に低くなるのがわかります。ただし、これらはあらゆる状態の患者さんすべてを含む生存曲線であるため、個々の患者さんに対して、必ずしもすべて当てはまるものではありません。

食道 (扁平上皮癌) 2018-2022年症例のうち癌腫のみ(悪性リンパ腫、肉腫等を除く)治療前・UICCステージ

UICCについて集計を行った。
※症例20:自施設で診断され、自施設で初回治療を開始(経過観察も含む)
 症例21:自施設で診断され、自施設で初回治療を継続(経過観察も含む)
 症例30:他施設で診断され、自施設で初回治療を開始(経過観察も含む)
 症例31:他施設で診断され、自施設で初回治療を継続(経過観察も含む)
※図4の生存曲線は全生存率として集計(がん以外の死因も含む)

図1 ステージ別症例数(症例20、21、30、31)

図2 ステージ別発見経緯(症例20、21、30、31)

図3 ステージ別治療法(症例20、21、30、31)

食道 (腺癌) 2018-2022年症例のうち癌腫のみ(悪性リンパ腫、肉腫等を除く)治療前・UICCステージ

図1 ステージ別症例数(症例20、21、30、31)

図2 ステージ別発見経緯(症例20、21、30、31)

図3 ステージ別治療法(症例20、21、30、31)※重複あり

図4 Kaplan-Meier生存曲線(食道:扁平上皮癌、腺癌合わせたもの)