九州大学病院のがん診療

大腸がん

放射線治療

大腸がんの治療は手術が第一選択であり、原発巣の根治目的で放射線治療を行うことはほとんどありませんが、手術の補助的な役割や再発・転移時に放射線治療の適応になります。具体的には、直腸癌の術前に局所制御率・肛門括約筋温存率の向上を目的として、化学放射線療法を行うことがあります。また、術後再発巣が骨盤内に限局して、再切除が難しい場合、根治的放射線治療の適応になります。脳や肺に転移があっても、数が少なく、小さい場合、定位照射が適応になることがあります。その他、症状の改善を目的とした緩和照射も積極的に行っています。
放射線治療は、腫瘍の性質や進展形式を考慮して照射範囲を設定し、最適な治療法、線量分割で、照射を行います。通常1日1回、週5回、1回につき1.8〜3グレイ(放射線量の単位)、総線量30〜60グレイ程度を2〜6週間かけて行います。1日の照射時間は2〜3分程度で、その間痛みや熱さを感じることはありません。
放射線治療の副作用は治療期間中に生じる急性期有害事象と、治療終了数カ月後以降に生じる晩期有害事象に分けられます。急性期有害事象としては、照射野に一致した皮膚炎、悪心、嘔吐、全身倦怠感、腸炎、肛門炎、膀胱炎などが生じることがありますが、治療終了後には改善していきます。晩期有害事象には腸閉塞、腸出血・潰瘍・穿孔、ろう孔形成、骨盤骨折、二次がんなどがありますが、重篤なものはまれです。

用語解説

化学放射線療法 : 抗がん剤と放射線を組み合わせて行うがんの治療方法
急性期有害事象 : 放射線治療期間中および照射終了1ヶ月程度まに発生してくる障害
晩期有害事象 : 治療が終了後約3か月以降に発生してくる障害
ろう孔形成 : 炎症などによって生じた体の組織の穴。栄養補給などのために、人工的に作る場合もある。