九州大学病院のがん診療

肝がん

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はじめに

肝臓から発生する癌を「原発性肝癌」と呼び、この中には、肝細胞から発生する「肝細胞癌」と胆管細胞に由来する「胆肝細胞癌」が含まれます。(このふたつ以外の癌は極めてまれです。)

肝細胞癌は、肝硬変や慢性肝炎を背景として発生することがほとんどですが、日本は先進国の中では、B型肝炎ウイルス・C型肝炎ウイルスの保有率が高い国として知られています。従って、日本における原発性肝癌の大半は、肝細胞癌で占められます。

肝細胞癌の発生を抑制するためには、肝炎ウイルスの感染者を減らすことが重要です。C型肝炎ウイルスについては、1992年からインターフェロンによる治療が行われるようになり、様々な改良が加えられてきました。2011年からは、インターフェロンとプロテアーゼ阻害剤の併用療法が認可され、それまで難治性とされてきた1型高ウイルス量の患者さんの治療効果が劇的に改善しました。さらに、副作用の少ない抗ウイルス薬の開発が相次ぎ、現在では、インターフェロンを使用しない、経口薬だけの治療も行われるようになり、90%以上の確率でウイルスを排除することが可能になりました。このような継続的な治療薬の改良によって、C型肝炎ウイルスの感染者は急速に減少しています。また、B型肝炎ウイルスは、出産時の母子感染をワクチンで防ぐことにより、感染者を減らすことに成功しています。

C型・B型肝炎ウイルス感染者数の減少に伴って、我が国の肝細胞癌の患者数も、減少に向かい始めています。厚生労働省の統計では、2005年をピークに肝癌による死亡者数は減少に転じており、2013年の部位別癌死亡者数では、膵癌と入れ替わって5番目に順位を下げています。最近の肝細胞癌の患者さんの特徴は、高齢化とC型・B型肝炎ウイルス感染者以外からの発癌です。特に最近注目されているのは、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)から発生する肝細胞癌です。NASHの多くは、肥満・糖尿病を背景として発症するため、生活習慣病の一つと考えられます。

肝細胞癌は、多くの場合、肝硬変の患者さんに発生します。肝臓は本来予備能力の高い臓器ですが、肝硬変が合併していると、肝切除が不可能になることが少なくありません。そのため、肝切除以外の治療法、すなわち、肝動脈塞栓療法・エタノール注入療法・ラジオ波焼灼療法などが考案され、普及しました。どの治療法を選択するかは、肝硬変の程度や癌の進行度などを総合的に考慮して決定されます。最近では、新しい抗癌剤が開発されるなどして、治療の選択肢が広がりつつあります。また、従来の外科治療では対処できなかった症例についても、肝移植の対象となる場合があります。さらに、肝細胞癌は再発が多いという特徴がありますが、癌の治療後に、肝炎ウイルスに対する治療を追加することによって、再発率を抑制できるというデータも出てきています。

このように多様な治療法が可能となったため、外科・内科・放射線科が協力して治療に当たる体制が不可欠です。当院では、異なった背景を持つ個々の患者さんに対して最善な治療が行えるよう、各科が緊密に連携して診療を行っています。

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