九州大学病院のがん診療

肝がん

院内がん登録情報

肝細胞癌の初発の症例の内訳を見ると、登録情報の図1、図2からもわかりますように、ステージⅡまで見つかる方は経過観察を受けられている方の割合が多いです。一方、30%弱の方はステージⅢ以上の進行症例で見つかり、経過観察の割合が低く、自覚症状等での紹介受診となっています。早期発見のためにB型・C型肝炎ウイルス検査、腹部スクリーニング検査を含めた検診が重要であることが示唆されます。

図3はステージ別での各治療法をグラフにしています。ステージⅢまでは外科的治療の割合は多いですが、ステージⅣでは薬物療法(化学療法)が最も多くなります。

図4にお示ししますように、ステージⅢやステージⅣ(AまたはB)の癌では、生存率が良好とは言えません。最近では、外科治療や内科治療等を組み合わせた集学的治療による治療成績の向上に努めています。一方、ステージⅠ及びⅡの肝がんでは、当院の治療成績ですと、60%以上の5年生存率が得られています。これは、わが国でもトップクラスの成績です。
肝内胆管がんにおいては、肝細胞癌とは異なり、早期で発見される方の割合は少ないです。肝細胞癌と同様に早期発見への取り組みが重要になってきます。薬物療法(化学療法)の割合はステージⅢから増加しています。

用語解説

化学療法 : 化学物質によってがんや細菌その他の病原体を殺すか、その発育を抑制して病気を治療する方法

肝 2018-2022年症例のうち癌腫のみ(悪性リンパ腫、肉腫等を除く)治療前・取扱い規約ステージ(第6版・第6版補訂版)

取扱い規約について集計を行った。2019年に軽度の改訂があったがステージングに影響はないため、合算した。
※症例20:自施設で診断され、自施設で初回治療を開始(経過観察も含む)
 症例21:自施設で診断され、自施設で初回治療を継続(経過観察も含む)
 症例30:他施設で診断され、自施設で初回治療を開始(経過観察も含む)
 症例31:他施設で診断され、自施設で初回治療を継続(経過観察も含む)
※図4の生存曲線は全生存率として集計(がん以外の死因も含む)

図1 ステージ別症例数(症例20、21、30、31)

図2 ステージ別発見経緯(症例20、21、30、31)

図3 ステージ別治療法(症例20、21、30、31)※重複あり

図4 Kaplan-Meier生存曲線(肝)

肝内胆管 2018-2022年症例のうち癌腫のみ(悪性リンパ腫、肉腫等を除く)治療前・取扱い規約ステージ(第6版・第6版補訂版)

図1 ステージ別症例数(症例20、21、30、31)

図2 ステージ別発見経緯(症例20、21、30、31)

図3 ステージ別治療法(症例20、21、30、31)※重複あり

図4 Kaplan-Meier生存曲線(肝内胆管)