九州大学病院のがん診療

膵がん

院内がん登録情報

2018年から2022年までに膵がんの診断を受けて九州大学病院で治療が行われた患者さんは、575例であり、年平均144例が当院で診断・治療を行われています。

膵がんの進行度別に登録症例数の割合をみると(図1)、ステージ0が2.4%、ステージⅠが17.6%、ステージⅡが35.0%、ステージⅢが12.9%、ステージⅣが32.2%でした(図1)。当院の特徴として、手術治療を目的とする患者さんが多い傾向にあり、膵がん治療における当院の役割を示しています。

早期の膵がんは他疾患の検査や経過観察中に偶然、発見されることが多く、進行した膵がんは逆に自覚症状(腹痛や黄疸など)の出現をきっかけに検査をされて、発見されることが多いです(図2)。

ステージ0は腫瘍が膵管上皮内にとどまっている状態であり、基本的には手術が行われています(図3)。ステージⅠは腫瘍が膵臓の中に留まり、その大きさが2cm以下で、リンパ節転移もない状態です。ステージⅡは腫瘍が2cm以上ですが、近くの大きな血管や神経などには及ばず、膵臓周囲のリンパ節まで転移がある状態です。いずれも手術を中心とした治療が行われますが、現在は術前・術後に補助化学療法(抗がん剤治療)が行われています。手術と抗がん剤治療を併せて実施することによって以前より良い治療成績が得られています。(図3)ステージⅢは腫瘍が重要な動脈にまで広がっていて、リンパ節への転移は膵臓の近くに留まる状態です。この状態ではまず抗がん剤治療を行います。放射線治療を併用することもあります。その後に治療効果を判定し、手術ができるかを再評価します。腫瘍が縮小して手術可能となる患者さんは当院では約10%です(図3)。ステージⅣは膵臓から離れたリンパ節に転移している状態、或いは肝臓や肺などに転移した状態で発見された場合です。基本的には抗がん剤による治療が行われます。抗がん剤治療の結果、腫瘍が縮小して手術可能となる患者さんもいますが、その頻度は1%程度です。

図4に膵癌のステージ別の生存曲線を示しています。

膵 2018-2022年症例のうち癌腫のみ(悪性リンパ腫、肉腫等を除く)治療前・取扱い規約ステージ(膵癌取扱い規約第7版・第7版増補版)

取扱い規約について集計を行った。
2020年に軽度の改訂があったがステージングに影響はないため、合算した。
※症例20:自施設で診断され、自施設で初回治療を開始(経過観察も含む)
 症例21:自施設で診断され、自施設で初回治療を継続(経過観察も含む)
 症例30:他施設で診断され、自施設で初回治療を開始(経過観察も含む)
 症例31:他施設で診断され、自施設で初回治療を継続(経過観察も含む)
※図4の生存曲線は全生存率として集計(がん以外の死因も含む)

図1 ステージ別症例数(症例20、21、30、31)

図2 ステージ別発見経緯(症例20、21、30、31)

図3 ステージ別治療法(症例20、21、30、31)※重複あり

図4 Kaplan-Meier生存曲線
(膵)