九州大学病院のがん診療

胆道がん

診断

胆道がんの診断のきっかけとなる症状は黄疸、腹痛が約80%を占めます。また、無症状でも血液検査で血清ビリルビン、アルカリフォスファターゼ、γGTPなどの上昇、CEA、CA19-9などの腫瘍マーカーの高値を認めた場合には、腹部超音波検査CTMRI(MRCP)、超音波内視鏡EUS)を行い、必要に応じて侵襲的な検査である内視鏡的逆行性膵胆道造影(ERCP)、管腔内超音波(IDUS)、経口胆道鏡(POCS)などを追加し診断を確定します。血液検査と腹部超音波検査は低侵襲かつ簡便であるため第一段階の検査として有用です。CTおよびMRIは病変の局在や進展度を診断することができます。ERCPは胆管狭窄に対する水平方向の進展診断に有用で、細胞診(胆汁および狭窄部擦過)、透視下生検が可能です。同時に行われるIDUSで深達度診断、血管浸潤や壁内進展を診断し、POCSで直接、胆管内を観察し、生検することで診断能を上げています。さらに検査・診断に引き続いて行われる胆道ドレナージは黄疸治療に重要です。当院では多くのERCPを行い、IDUSやPOCSを併用した診断を行っています。リンパ節転移や遠隔転移の検出にはPET検査(PET/PET-CT)も有用です。

胆嚢がん

胆嚢がんは検診などの腹部超音波検査で発見されることが多く、CTにより深達度や遠隔転移、脈管・周辺臓器への浸潤などの評価を行います。最近ではマルチスライスCT(MDCT)の発達によって、より正確な診断が可能となっています。EUSは深達度診断に有用です。ERCPでは、胆汁を採取することにより細胞診を行うことができます。

胆管がん

胆管がんは黄疸や血液検査で肝障害を契機に発見されることが多く、腹部超音波検査で拡張した胆管や狭窄部位を描出されます。腹部超音波検査で描出が難しい場合には、磁気共鳴胆管膵管撮影法(MRCP)を用いることで胆管拡張・狭窄の描出が可能です。ERCPによる胆管の直接造影では狭窄範囲や拡張の評価に加え、POCS、IDUSを用いたがんの進展範囲、深達度の詳細な評価が可能で、さらに病理診断のために細胞診・生検を行うことができます。黄疸がある場合には狭窄部にステントを留置することで黄疸の改善が可能です。

十二指腸乳頭部がん

十二指腸乳頭部がんの初発症状は黄疸が最も多く、上部消化管内視鏡検査で観察、生検を行い診断します。超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)を用いた病理診断を行う場合もあります。転移の有無の評価にはCT、MRI、深達度の評価にはEUSが有用です。
また、膵胆管合流異常症原発性硬化性胆管炎などが胆道がんのリスクファクターとして知られており、MRCPやEUS、ERCPで評価し診断が確定した場合には、胆道がんが出現していない場合でも厳重な経過観察や予防的手術が必要になることもあります。

用語解説

腫瘍マーカー : 血中濃度や尿中濃度を調べることにより腫瘍の有無や場所の診断に用いられる物質の総称
超音波検査 : 超音波を当て、反射する反射波を画像処理し臓器の状態を調べる検査
CT : コンピュータ断層法。身体の横断断層を撮影する特殊なX線装置
MRI : 強い磁石と磁気を利用して体の内部を検査する機器
超音波内視鏡 : 超音波診断装置を伴った内視鏡
EUS : 超音波内視鏡。超音波診断装置を伴った内視鏡
胆道鏡 : 内視鏡を胆道に挿入し、診断・治療を行うための方法
低侵襲 : 身体にかかる負担が少ない
透視 : 造影剤(バリウム)を服用し、X線を用いて体内を検査する方法。
PET : がん細胞だけに集積する検査薬を体内に取り込み専用の装置で体を撮影する画像診断法
MDCT : 1回転で複数の画像を収集(撮影)できるCT
MRCP : 磁気共鳴胆管膵管造影。MRI検査法のひとつで、造影剤を使わずに膵管・胆管などを強調して撮影する方法
膵胆管合流異常症 : 膵管と胆管が合流する形が通常と異なる状態
原発性硬化性胆管炎 : 胆管壁の炎症により次第に胆管壁が硬化し、最終的には肝硬変や肝不全を生じる疾患