九州大学病院のがん診療

乳がん

院内がん登録情報

①乳癌のステージ

乳癌の進行の程度を表すのに「ステージ分類」を用います。ステージは0からⅣまであり、進行に従い数字が大きくなります。乳癌のステージは「腫瘍の大きさ」、「リンパ節転移」、「臓器転移」の程度により決定します。当院におけるステージ別の症例数を図1に示します。ステージⅠが最も多く(45.2%)、次いでステージⅡA(21.4%)、ステージ0(13.4%)となっています。また発見時にすでに遠隔転移を有するステージⅣは3.8%を占めます。

②乳癌の発見契機

乳癌の発見契機としては、自覚症状や検診によるもの、他の検査にて偶発的に見つかることがあります。当院での発見経緯を図2に示します。自覚症状が最も多く約54%で、次いで他の検査にて偶発的に見つかる場合が約24%、がん検診・健康診断・ドックによるものが約22%を占めます。特にステージ0-Ⅰの比較的早期のものでは、検診発見割合が多く、検診が乳癌早期発見において有用であることを示唆しています。

③治療法

乳癌の治療は、「手術」、「放射線」、「薬物」の組み合わせになります。腫瘍のステージ別の治療方法について図3に示します。Stage 0では、手術療法の
みが約半数を占め、局所切除による根治が期待できます。一方、すでに遠隔転移を有するStage Ⅳでは、根治が難しく、症状緩和・生活の質(Quality of life)
の維持・生存期間の延長が治療目的であり、原則、手術は行わずに薬物療法が中心となります。

④生存率

乳癌は、他癌腫にくらべ、比較的予後がよいタイプの癌になりますが、進行の程度(ステージ)によりその予後は様々です。当院における2012年-2016年の乳癌登録症例の5年の生存曲線を図4に示します。Stage 0-I乳癌の5年生存率は約90%と予後が良く、Stage Ⅲ、Ⅳの進行乳癌はそれぞれ60%、40%以下と予後が悪くなります。しかしながら、近年は薬物療法の進歩により、Stage Ⅳ乳癌の予後は徐々に改善しつつあります。生存率においても、早期発見の重要性を示しています。

乳房 2018-2022年症例のうち癌腫のみ(悪性リンパ腫、肉腫等を除く)治療前・取扱い規約ステージ(乳癌取扱い規約第18版)

取扱い規約について集計を行った。
※症例20:自施設で診断され、自施設で初回治療を開始(経過観察も含む)
 症例21:自施設で診断され、自施設で初回治療を継続(経過観察も含む)
 症例30:他施設で診断され、自施設で初回治療を開始(経過観察も含む)
 症例31:他施設で診断され、自施設で初回治療を継続(経過観察も含む)
※図4の生存曲線は全生存率として集計(がん以外の死因も含む)

図1 ステージ別症例数(症例20、21、30、31)

図2 ステージ別発見経緯(症例20、21、30、31)

図3 ステージ別治療法(症例20、21、30、31)※重複あり

図4 Kaplan-Meier生存曲線(乳房)