九州大学病院のがん診療

甲状腺がん

院内がん登録情報

2018年から2022年の間に甲状腺がんの診断を受けて九州大学病院で初回治療を行った患者さんは268例であり、そのうちの95%以上を分化がん(乳頭がん・濾胞がん)の患者さんが占めています。

甲状腺がんの臨床病期/ステージ(図1)

甲状腺がんのステージ(病期)はがんのタイプによって異なっており、さらに、分化がん(乳頭がん・濾胞がん)のステージは、年齢によっても異なります(以前は45歳未満と45歳以上で分類していましたが、2017年にUICCが、2019年に癌取り扱い規約が改訂され、55歳未満と55歳以上で分類されるようになりました)。甲状腺分化がんは、年齢が若いと予後が良いため55歳未満ではステージがⅠとⅡしかないのが特徴となります(ステージⅢ、Ⅳがありません)。一方で未分化癌は非常に予後が悪いため、すべてステージⅣに分類されます。

甲状腺がんの発見契機(図2)

甲状腺がんは初期のうちは自覚症状に乏しいため、リンパ節に転移のないような早期の患者さんの場合、その半数以上が他疾患の経過観察中の画像検査や、また、がん検診、健康診断、人間ドックなどで偶発的に発見されています。

治療法(図3)

前述のように、甲状腺がんではいずれのタイプでも、またどのような進行度でも、根治を目指す場合は可能な限りまずは手術療法が選択されます。当院では、他の施設で手術を受けたのちに当院へ紹介となり放射線治療(ヨウ素治療)を行う症例がかなり多いため、図3では放射線治療の割合が多くなっています。しかしながら実際には、甲状腺がんの患者さんの90%以上が初回治療として手術を受けており、その後、再発の可能性が高い症例に放射線治療(ヨウ素治療)を実施しています。また2014年から、甲状腺がんに対し効果が立証された抗癌剤が複数保険適応となっており、抗癌剤による治療症例も増加しています。(*なお図では内分泌療法が約20%を占めていますが、これは甲状腺がんに対し単独で内分泌療法を行うという意味ではなく、甲状腺手術後の補助療法、いわゆる手術療法後の内分泌療法という意味です)

生存率(図4)

2012年から2016年の間に治療を受けられた分化がん(乳頭がん・濾胞がん)の患者さんの生存曲線(5年生存率)を示します(以前の取扱い規約によるステージ分類のため、年齢の区切りが45歳未満・45歳以上となっています)。ステージⅠ、Ⅱでは80%以上の5年生存率で、ステージⅣの患者さんでも60%を超える5年生存率であり、他のがんに比べ癌細胞の性質がおとなしく長期間元気な場合が多いことがわかります。なお、この生存曲線は全生存率であり、甲状腺がんが原因で死亡する場合以外の死亡も含まれています。このため、早期のステージが、進行したステージよりも5年生存率が悪い結果が時々みうけられますが(例えば45歳未満でステージⅠの患者さんの5年生存率がステージⅡの患者さんよりも低いことなど)、甲状腺がんのみの死亡に限定するとステージが進行するにつれ、生存率は低下します。

用語解説
病期 : 疾病の経過をその特徴によって区分した時期

甲状腺乳頭癌・濾胞癌(55歳未満) 2018-2022年症例のうち癌腫のみ(悪性リンパ腫、肉腫等を除く)治療前・UICCステージ

UICCについて集計を行った。
※症例20:自施設で診断され、自施設で初回治療を開始(経過観察も含む)
症例21:自施設で診断され、自施設で初回治療を継続(経過観察も含む)
症例30:他施設で診断され、自施設で初回治療を開始(経過観察も含む)
症例31:他施設で診断され、自施設で初回治療を継続(経過観察も含む)
※図4の生存曲線は全生存率として集計(がん以外の死因も含む)

図1 ステージ別症例数(症例20、21、30、31)

図2 ステージ別発見経緯(症例20、21、30、31)

図3 ステージ別治療法(症例20、21、30、31) ※重複あり

図4 Kaplan-Meier生存曲線(甲状腺乳頭癌・濾胞癌 45歳未満)

甲状腺乳頭癌・濾胞癌(55歳以上) 2018-2022年症例のうち癌腫のみ(悪性リンパ腫、肉腫等を除く)治療前・UICCステージ

UICCについて集計を行った。
※症例20:自施設で診断され、自施設で初回治療を開始(経過観察も含む)
症例21:自施設で診断され、自施設で初回治療を継続(経過観察も含む)
症例30:他施設で診断され、自施設で初回治療を開始(経過観察も含む)
症例31:他施設で診断され、自施設で初回治療を継続(経過観察も含む)
※図4の生存曲線は全生存率として集計(がん以外の死因も含む)

図1 ステージ別症例数(症例20、21、30、31)

図2 ステージ別発見経緯(症例20、21、30、31)

図3 ステージ別治療法(症例20、21、30、31) ※重複あり

図4 Kaplan-Meier生存曲線(甲状腺乳頭癌・濾胞癌 45歳以上)

甲状腺髄様癌 2018-2022年症例のうち癌腫のみ(悪性リンパ腫、肉腫等を除く)治療前・UICCステージ

UICCについて集計を行った。
※症例20:自施設で診断され、自施設で初回治療を開始(経過観察も含む)
症例21:自施設で診断され、自施設で初回治療を継続(経過観察も含む)
症例30:他施設で診断され、自施設で初回治療を開始(経過観察も含む)
症例31:他施設で診断され、自施設で初回治療を継続(経過観察も含む)
※図4の生存曲線は全生存率として集計(がん以外の死因も含む)

図1 ステージ別症例数(症例20、21、30、31)

図2 ステージ別発見経緯(症例20、21、30、31)

図3 ステージ別治療法(症例20、21、30、31) ※重複あり

甲状腺未分化癌 2018-2022年症例のうち癌腫のみ(悪性リンパ腫、肉腫等を除く)治療前・UICCステージ

UICCについて集計を行った。
※症例20:自施設で診断され、自施設で初回治療を開始(経過観察も含む)
症例21:自施設で診断され、自施設で初回治療を継続(経過観察も含む)
症例30:他施設で診断され、自施設で初回治療を開始(経過観察も含む)
症例31:他施設で診断され、自施設で初回治療を継続(経過観察も含む)
※図4の生存曲線は全生存率として集計(がん以外の死因も含む)

図1 ステージ別症例数(症例20、21、30、31)

図2 ステージ別発見経緯(症例20、21、30、31)

図3 ステージ別治療法(症例20、21、30、31) ※重複あり