九州大学病院のがん診療

前立腺がん

診断

代表的な検査として、①前立腺がんの腫瘍マーカーである前立腺特異抗原(PSA)検査(血液検査)、②肛門から指を入れて前立腺をさわって調べる直腸診、③前立腺超音波検査があります。さらにがんの疑いがあれば前立腺生検を行います。PSA検査は、症状の全くない早期の前立腺がんを発見するのに最も有用で、採血だけですむため、患者さんの負担も少なくてすみます。また、前立腺超音波検査の中でも肛門から検査する経直腸的超音波検査が前立腺全体の観察に優れており、がんの場所を診断することも可能なことがあります。当科もこの方法で検査を行っています。また、近年、前立腺がんの局在や悪性度を予測する方法の一つとしてMRIによる評価の有用性が示されました。上に挙げた検査で前立腺がんを疑う場合、当科ではMRIを行うことも検討しながら診療しています。

前立腺生検は陰部に対する麻酔をしたあと、超音波で位置を確認しながら直腸または会陰(陰嚢と肛門の間のまたの部分)から細い針で前立腺の組織を少し取る検査です。当科ではあらかじめ撮影した前立腺のMRI画像をリアルタイムで照らし合わせ、癌を疑う部位(標的病変)から組織を回収するMRI超音波融合生検を導入しています。これにより、従来の方法より高感度に前立腺癌を診断することができるようになっています。針生検により前立腺がんが発見された場合は、悪性度やがんの占める割合などの診断を併せて行います。悪性度はグリソンスコアと呼ばれる分類が使われます。さらに、CT、MRI、骨シンチ検査などで前立腺や全身でのがんの広がりを調べ進行度を決定します。前立腺がんの進行度は、①限局性前立腺がん:転移がない状態、②局所進行癌:転移はないが、前立腺の外までがんが広がっている状態、③転移性前立腺がん:リンパ節や骨などに転移がある状態に分類できます。

さらに限局性前立腺がんはPSA値、臨床病期(前立腺でのがんの広がり)、グリソンスコアの3つの因子を用いて、低リスク、中リスク、高リスクに分けて治療選択を行うことが一般的となっています(表1、2)。

用語解説
腫瘍マーカー : 血中濃度や尿中濃度を調べることにより腫瘍の有無や場所の診断に用いられる物質の総称
PSA : 前立腺特異抗原。腫瘍マーカーとして用いられる
超音波検査 : 超音波を当て、反射する反射波を画像処理し臓器の状態を調べる検査
MRI : 強い磁石と磁気を利用して体の内部を検査する機器
針生検 : 針を用いて肝臓などの体内臓器を穿刺して組織を採取する方法
CT : コンピュータ断層法。身体の横断断層を撮影する特殊なX線装置
骨シンチ : 骨に集積する薬剤を静注後、シンチカメラで全身および局所のイメージを撮影する核医学画像検査
病期 : 疾病の経過をその特徴によって区分した時期