九州大学病院のがん診療

腎盂尿管がん

内科的治療

腎盂尿管がんに対する内科的治療として主なものに以下の二つがあります。一つは、がんの局所治療として行うBCG(ウシ型弱毒結核菌)あるいは抗がん剤の注入療法で、もう一つは全身療法として行うがん薬物療法です。腎盂・尿管がん、膀胱がんをまとめて尿路上皮がんと呼びますが、進行尿路上皮がんに対する薬物療法は腎盂・尿管がん、膀胱がん共通で同じ治療戦略をとっています。

BCG腔内注入療法あるいは抗がん剤腔内注入療法

腎盂・尿管がんの中でも上皮内がんといって上皮内のみに広がるがんがある場合に、尿管内にステントという細い管を入れ、この管を通してBCGを注入します。副作用として、発熱や排尿時痛が起こることがあります。また、腎機能が悪いなどの理由で腎尿管全摘除術が難しい場合などに、前述の経尿道的腎盂・尿管腫瘍切除術と組み合わせて抗がん剤の注入や、BCGの注入を行うことがあります。

全身化学療法

点滴等により抗がん剤を投与して行う治療です。腎盂尿管がんで転移のある場合や手術後に再発した場合などで行われる全身に対する治療です。一般的には、進行膀胱がんでも行われる数種類の抗がん剤を組み合わせて使う多剤併用化学療法が行われます。また、手術前にリンパ節転移や浸潤が疑われるような進行がんの場合に、術前補助化学療法として抗がん剤治療を行い、その効果をみて手術を行うこともあります。一方、手術後の組織検査の結果、周囲の脂肪組織へがんが進展している場合、血管やリンパ管などにがんが入り込んでいる場合などは、再発の危険性が高くなることが知られているため補助化学療法といって予防的に抗がん剤治療を行うこともあります。

免疫チェックポイント阻害薬

私たちの体に備わっている免疫の機能には、発生したがん細胞を異物として排除する働きがありますが、がん細胞はその免疫機能にブレーキをかけ排除されないようにしていることがあります。免疫チェックポイント阻害薬は、このブレーキをかけられないように阻害する薬で、一次療法として行われる全身化学療法の後に使用することで尿路上皮がんの転移に有効であることが示されています。

抗体薬物複合体

一次治療である抗がん剤による全身化学療法、さらに免疫チェックポイント阻害薬にて治療を行っても病状が進行してくる場合があります。最近になりこのような進行した状態でも有効な薬剤として抗体薬物複合体という新しいタイプの薬剤が登場し、保険適用となりました。
用語解説

BCG : 結核予防用のワクチン
化学療法 : 化学物質によってがんや細菌その他の病原体を殺すか、その発育を抑制して病気を治療する方法

免疫チェックポイント阻害薬 : 免疫療法のひとつ。がん細胞により抑制されていた免疫機能を活性化させる