九州大学病院のがん診療

子宮がん

診断

子宮頸癌

1)子宮頸部細胞診
主に子宮がん検診で行われている検査です。子宮頸部表面全体を擦りその部分の細胞を採取し、顕微鏡で癌細胞や前癌病変細胞の有無を検査します。

2)腟拡大鏡検査(コルポスコープ)
細胞診で異常が出た場合、コルポスコープという拡大鏡で、子宮頸部粘膜表面を拡大して観察します。異常があれば、その部位より組織検査を行います。

3)子宮頸部組織診(生検)
子宮頸部の一部を採取し顕微鏡で検査します。組織診はより精密な検査で、前癌病変である扁平上皮内病変の程度(軽度・高度)や、癌の組織型と進行度を診断します。

4)子宮頸部円錐切除術
子宮頸部を円錐状に切除して検査します。病変が子宮口の奥にあり組織診のみでは診断が不十分な場合や、癌が疑われても上皮内病変・浸潤癌の判別がつかない場合等、主として検査目的で行います。また上皮内病変やIA1期の場合には本手術が治療となる場合もあります。通常短期入院で行います。

5)画像診断
組織診で子宮頸がんと診断されたら、病巣の大きさと拡がりを調べます。内診と各種の検査(膀胱鏡検査、直腸鏡検査、胸部X線検査、尿路造影検査、CT検査、MRI検査、PET-CT検査など)を行い、癌が近くの組織に浸潤していないか、遠くに転移していないかを調べます。

子宮体癌

1)子宮内膜細胞診
主に子宮体がん検診で行われている検査です。子宮内腔に細長い器具を挿入して子宮内膜の細胞を採取し、顕微鏡で癌細胞や前癌病変の有無を検査します。

2)子宮内膜組織診(生検)
子宮内腔に細長い器具を挿入して子宮内膜の一部を採取し、顕微鏡で検査します。組織診はより精密な検査で、前癌病変である子宮内膜増殖症の程度、体癌の悪性度(グレード)を診断します。外来での検査では診断が難しい場合、入院して麻酔下により広範囲の組織検査(子宮内膜全面掻爬術)を行うこともあります。

3)画像診断
組織診で子宮体癌と診断されたら、病巣の大きさと拡がりを調べます。内診と各種の検査(超音波検査、CT検査、MRI検査、PET-CT検査など)を行い、癌が子宮の筋層や頸部まで浸潤していないか、遠くに転移していないかについて調べます。

子宮頸癌の進行期分類(日産婦2020、FIGO2018)

Ⅰ期:癌が子宮頸部に限局するもの(体部浸潤の有無は考慮しない)
 ⅠA期:病理組織学的にのみ診断できる浸潤癌のうち、間質浸潤が5mm以下のもの
  ⅠA1期:間質浸潤の深さが3mm以内のもの
  ⅠA2期:間質浸潤の深さが3mmをこえるが、5mm以下のもの
 ⅠB期:子宮頸部に限局する浸潤癌のうち、浸潤の深さが5mmをこえるもの
  ⅠB1期:腫瘍最大径が2cm以内のもの
  ⅠB2期:腫瘍最大径が2cmをこえるが、4cm以下のもの
  ⅠB3期:腫瘍最大径が4cmをこえるもの

Ⅱ期:癌が子宮頸部をこえて広がっているが、腟壁下1/3または骨盤壁には達していないもの
 ⅡA期:腟壁浸潤が腟壁上2/3に限局していて、子宮傍組織浸潤は認められないもの
  ⅡA1期:腫瘍最大径が4cm以下のもの
  ⅡA2期:腫瘍最大径が4cmをこえるもの
 ⅡB期:子宮傍組織浸潤が認められるが、骨盤壁までは達しないもの

Ⅲ期:癌浸潤が腟壁下1/3に達するもの、ならびに/あるいは骨盤壁にまで達するもの
 ⅢA期:腟は腟壁下1/3に達するが、骨盤壁にまでは達していないもの
 ⅢB期:子宮傍組織浸潤が骨盤壁にまで達しているもの、ならびに/あるいは明らかな水腎症や無機能腎が認められるもの
 ⅢC期:骨盤リンパ節ならびに/あるいは傍大動脈リンパ節に転移が認められるもの
  ⅢC1期:骨盤リンパ節のみに転移が認められるもの
  ⅢC2期:傍大動脈リンパ節に転移が認められるもの

Ⅳ期:癌が膀胱粘膜または直腸粘膜に浸潤するか、小骨盤腔をこえて広がるもの
 ⅣA期:膀胱粘膜または直腸粘膜へ浸潤があるもの
 ⅣB期:小骨盤腔をこえて広がるもの

子宮体癌(子宮内膜癌)の進行期分類(日産婦2011、FIGO2008)

Ⅰ期:癌が子宮体部に限局するもの
 ⅠA期:浸潤が子宮筋層1/2未満のもの
 ⅠB期:浸潤が子宮筋層1/2を以上のもの

Ⅱ期:癌が頸部間質に浸潤するが、子宮を超えていないもの

Ⅲ期:癌が子宮外に広がるが、小骨盤を超えていないもの、または所属リンパ節へ広がるもの
 ⅢA期:子宮漿膜ならびに/あるいは付属器を侵すもの
 ⅢB期:腟ならびに/あるいは子宮傍組織へ広がるもの
 ⅢC期:骨盤リンパ節ならびに/あるいは傍大動脈リンパ節転移のあるもの
  ⅢC1期:骨盤リンパ節転移陽性のもの
  ⅢC2期:骨盤リンパ節への転移の有無にかかわらず、傍大動脈リンパ節転移陽性のもの

Ⅳ期:癌が小骨盤腔をこえているか、明らかに膀胱ならびに/あるいは腸粘膜を侵すもの、ならびに/あるいは遠隔転移のあるもの
 ⅣA期:膀胱ならびに/あるいは腸粘膜浸潤のあるもの
 ⅣB期:腹腔内ならびに/あるいは鼠径リンパ節転移を含む遠隔転移のあるもの

用語解説
CT : コンピュータ断層法。身体の横断断層を撮影する特殊なX線装置
MRI : 強い磁石と磁気を利用して体の内部を検査する機器
PET : がん細胞だけに集積する検査薬を体内に取り込み専用の装置で体を撮影する画像診断法
超音波検査 : 超音波を当て、反射する反射波を画像処理し臓器の状態を調べる検査
水腎症 : 様々な原因によって尿流を妨げ、腎盂・腎杯の拡張した状態