九州大学病院のがん診療

卵巣がん

院内がん登録情報

図1に卵巣がんのステージ別症例数を示します。

卵巣がんは早期の段階では無症状のことも多く、腹水貯留による腹部膨満感などの症状が出現したときには既にⅢ〜Ⅳ期の進行した状態であることも多いです(図2)。

卵巣がんの治療は手術が基本で、再発リスクが高い場合や手術で病変が完全摘出できなかった場合に抗がん剤による追加治療が行われます。発見の時点で病変が広範囲に広がり手術が困難と考えられる場合は、抗がん剤による治療を先に行うこともあります(図3)。

図4は九州大学病院における卵巣がんのKaplan-Meier生存曲線です。日本産科婦人科学会が2020年に公表している全国の病院における5年生存率は、ⅠA期93.0%、ⅠB期85.8%、ⅠC期87.7%、ⅡA期85.0%、ⅡB期79.1%、ⅡC期75.0%、ⅢA期59.1%、ⅢB期49.4%、ⅢC期48.6%、Ⅳ 32.4%で、ほぼ同等の成績でした。

一般的に九州大学病院などの大病院には重い合併症があるなど医学的管理が難しい症例が多く、十分な治療を提供できないことから中小病院に比べて治療成績が良くないことがあります。しかし九州大学病院の治療成績は全国のデータと同等であり、医学的管理が難しい症例においても一定水準以上の治療を提供できているものと考えられます。近年、進行・再発卵巣癌に対する薬物療法は大きく変わっており、腫瘍の性質に合わせて、PARP阻害薬や血管新生阻害薬を組み合わせることで、大きく予後が改善する症例も増えてきています。

卵巣 2018-2022年症例のうち癌腫のみ(悪性リンパ腫、肉腫等を除く)治療前・UICCステージ

UICCについて集計を行った。
※症例20:自施設で診断され、自施設で初回治療を開始(経過観察も含む)
 症例21:自施設で診断され、自施設で初回治療を継続(経過観察も含む)
 症例30:他施設で診断され、自施設で初回治療を開始(経過観察も含む)
 症例31:他施設で診断され、自施設で初回治療を継続(経過観察も含む)
※図4の生存曲線は全生存率として集計(がん以外の死因も含む)

図1 ステージ別症例数(症例20、21、30、31)

図2 ステージ別発見経緯(症例20、21、30、31)

図3 ステージ別治療法(症例20、21、30、31)※重複あり

図4 Kaplan-Meier生存曲線(卵巣)