九州大学病院のがん診療

造血器悪性腫瘍

診断

造血器悪性腫瘍の代表的な病気として、白血病・悪性リンパ腫・多発性骨髄腫などがあります。大きく、骨髄(骨の中に存在する血液細胞を作る工場です)で増える病気(白血病、多発性骨髄腫)とリンパ節(リンパ球が存在し、細菌等の異物除去といった免疫反応に重要な役割を果たします)で増える病気(悪性リンパ腫)に分けられます。骨髄が侵されると、正常の血液が上手く作れなくなるため、貧血や血小板減少などの血球減少をきたしたり、骨痛が生じたりします。リンパ節が侵されると、リンパ節が腫れたり全身的な症状として発熱や体重減少を自覚することもあります。上記のような様々な症状や血液検査所見から造血器悪性腫瘍を疑い、最終的に骨髄やリンパ節の組織検査を施行することにより、診断を確定します。

1.骨髄穿刺・生検

骨髄穿刺検査は、原則として腸骨(臀部の骨)で、それがどうしても困難な場合には胸骨(胸の真中の骨)で行います。はじめに皮膚および骨の表面に局所麻酔をして、骨髄穿刺針を骨に刺し、骨の内部(骨髄)まで押し進めます。針先が骨髄に入ったところで穿刺針に注射器をつなぎ、陰圧をかけて骨髄液を数ml吸引します。検査は10分程で終わりますが、その後30分程の安静時間が必要になります。麻酔をする時、骨髄液を吸引する時に鈍い痛みを感じる場合があります。必要に応じて、骨髄の組織を採取する骨髄生検検査を腸骨から行います。白血病では、異常な白血球(白血病細胞)が増加するため、血液や骨髄液を顕微鏡で観察して診断します。急性と慢性、骨髄性とリンパ性があり、まずは大きく4種類に分類します。同じ分類の中でも細かなタイプがあり、使用する抗癌剤の種類や効きやすさが異なりますので、白血病細胞の遺伝子変異の検査や染色体分析などが必要になります。多発性骨髄腫は、骨髄で異常な形質細胞(免疫グロブリンを産生する細胞)の増加があり、加えて血液検査でM蛋白やフリーライト鎖(がん細胞が作るクローン性の免疫グロブリン蛋白)が確認されれば診断に至ります。

2.リンパ節生検

リンパ節が腫れた時に、診察のみで良性/悪性を区別するのは困難なことも多く、しばしば生検(リンパ節を外科的に切除し顕微鏡で調べる検査)が必要になります。悪性リンパ腫は、組織検査で悪性度(低悪性度 or 中・高悪性度)や細胞の由来(B細胞性 or T/NK細胞性)など細かな分類を決定します。タイプに応じて治療方針が異なるため正確な組織検査が重要であり、ある程度の大きさのリンパ節を丸ごと採取するためには全身麻酔での手術が必要となる場合があります。悪性リンパ腫は、リンパ節以外の臓器(消化管や甲状腺等)に生じることもあり、この場合も病気のある場所から組織を採取して診断を行う必要があります。

3.その他

骨髄検査やリンパ節生検の検査で造血器悪性腫瘍の診断が確定した時には、病気の広がりを調べるために以下のような検査を行います。

骨X線写真
多発性骨髄腫は骨に腫瘤を作ったり、骨を溶かしたりするため全身のレントゲンで評価します。

CT検査、PET-CT検査
悪性リンパ腫の病期(病変の広がり具合)を決定するために、全身のCT検査を行います。リンパ節が腫れていないか、肝臓や脾臓などのリンパ臓器が腫れていないかなどを中心に確認します。PET-CT検査は注射したブドウ糖の類似物質が腫瘍細胞に取り込まれやすいという性質を利用して悪性腫瘍を検出する方法です。悪性リンパ腫はPET-CTで検出されやすい代表的な病気のひとつであり、病期により治療方針や抗がん剤治療の回数などが決定されるため、最近では診断時に必須の検査となっています。

用語解説

悪性リンパ腫 : リンパ系組織から発生する悪性腫瘍
CT : コンピュータ断層法。身体の横断断層を撮影する特殊なX線装置
PET : がん細胞だけに集積する検査薬を体内に取り込み専用の装置で体を撮影する画像診断法。