九州大学病院のがん診療

造血器悪性腫瘍

放射線治療

はじめに

放射線治療は造血器腫瘍の治療において、いろいろな場面で用いられています。例えば、悪性リンパ腫では化学療法と一緒に用いることで良好な成績が期待できます。また、白血病では、移植の前処置として全身照射:Total body irradiation(TBI)が用いられることがあります。以下、放射線治療が用いられる代表的な疾患とTBIについて記述します。

放射線治療が用いられる疾患

悪性リンパ腫

◎ホジキンリンパ腫
化学療法の後に放射線治療が用いられることがあります。また、放射線治療のみで治療することもあります。

◎非ホジキンリンパ腫
病変が限局した低〜中悪性度リンパ腫、NK/T細胞リンパ腫や中枢神経系の悪性リンパ腫に放射線治療が用いられます。

低悪性度リンパ腫 濾濾胞性リンパ腫やMALT(mucosa associated lymphoid tissue)リンパ腫などが挙げられます。病変が限局している場合、病変のあるリンパ節領域に30〜36Gyの放射線治療が行われます。
中悪性度リンパ腫 びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫のうち病変が限局している場合や、逆に大きな腫瘤がある場合などは、化学療法に加え放射線治療を行うことがあります。化学療法はCHOP療法または(CD20陽性であれば)リツキサン(R)を含めたR-CHOP療法が行われることが一般的です。放射線治療は、病変のあるリンパ節領域に対して行われ、30〜40Gy程度の線量が用いられます。
K/T細胞リンパ腫 鼻腔に発生したNK/T細胞リンパ腫では、化学療法であるDeVIC療法と鼻腔・上咽頭を含んだ領域の放射線治療を同時に行います。放射線の線量は50Gy以上が用いられます。
中枢神経系悪性リンパ腫 脳に発生した悪性リンパ腫では、化学療法を行った後に放射線治療が行われることがあります。放射線の線量は23.4〜50Gyが用いられます。
骨髄腫
◎多発性骨髄腫
症状をやわらげるために放射線治療が用いられます。病変のある骨全体に放射線を当てることが多いですが、範囲が広すぎる場合には、病変に適当なマージンを加えた範囲で治療を行います。線量は、20〜30Gy/10〜15Fr.が用いられます。

全身照射:Total body irradiation (TBI)

TBIとは、造血細胞移殖前の処置として、放射線を体全体に照射する治療です。治療の目的は、患者さんの体の中に残る腫瘍細胞のコントロールと移殖後の拒絶反応を抑えることです。この治療が用いられる代表的な病気としては白血病が挙げられます。TBIは、最大12Gy/6分割/3日の線量が用いられます。最近はミニ移殖の際に用いられることも多く、その場合には、2〜4Gy/1〜2分割/1日などの線量が用いられます。

用語解説
悪性リンパ腫 : リンパ系組織から発生する悪性腫瘍
化学療法 : 化学物質によってがんや細菌その他の病原体を殺すか、その発育を抑制して病気を治療する方法