九州大学病院のがん診療

小児がん

放射線治療

小児がんは放射線の感受性が比較的高いものが多いため、放射線療法の適応となることは多いのですが、放射線治療のみで治療が行われることはほとんどなく、化学療法や手術と組み合わせる、いわゆる「集学的治療」の一部として行われます。当院では、主に高エネルギーX線による治療を行っています。平成28年度の診療報酬点数改定により、小児がんに対する陽子線治療が保険診療として承認されましたので、特に陽子線治療が良いと思われる場合は他施設を紹介しています。

治療を行うことが決まると、まず準備として治療計画を行います。具体的には、身体に基準となる位置のマーキングを行い治療計画専用のCTを撮影します。その後、コンピューターを用いて放射線腫瘍医が腫瘍の拡がりやがん細胞の種類、正常臓器との位置関係、治療の目的などを総合的に考慮して、放射線を照射する範囲、照射方向、1回に照射する放射線量、照射回数等を決定します。治療計画用CT撮影の1週間後頃より治療が始まり、1日1回、週5回、1回の照射線量は1.5-2Gy(グレイ:放射線量の単位)程度のスケジュールで放射線治療を行っていきます。

治療計画CT撮影時や放射線治療の際に体が動いてしまうと危ないため、乳幼児ではしばしば鎮静薬の投与が必要となります。また、成人に比べて小児は正常組織の感受性が高いため、治療後に皮膚や軟部組織の萎縮や、骨の成長障害を伴うことがあります。加えて、放射線療法に伴う二次がんのリスクも考慮して放射線療法を行うかどうか慎重に判断します。以下、放射線治療がよく行われる疾患について簡単に述べます。

腎芽腫(ウィルムス腫瘍)

病理組織型と病期によって決まるリスク分類に応じて放射線療法の適応を決定します。照射する場合、総線量10-20Gy程度を行うのが一般的です。また、腹膜播種や肺転移に対して広範囲に照射を行う場合もあります。

神経芽腫

化学療法が奏功しない場合や、高リスク群などで、放射線治療を行います。化学療法、手術後の腫瘍の存在した部位に20Gy程度、残存病変があれば30Gy程度を照射します。

横紋筋肉腫

病期診断、組織型(胎児型、胞巣型)、発生部位により決定されるリスク分類にて放射線治療の適応を決定します。照射する場合、総線量41.4〜50.4Gy程度の照射を行うことが多いです。

白血病

急性白血病など血液悪性腫瘍では、骨髄移植前に前処置として全身照射(2〜12Gy)を行うことがあります。

用語解説

化学療法 : 化学物質によってがんや細菌その他の病原体を殺すか、その発育を抑制して病気を治療する方法
集学的治療 : 外科的治療、化学療法、放射線療法などの複数の治療方法を組み合わせて行うがんの治療法
CT : コンピュータ断層法。身体の横断断層を撮影する特殊なX線装置
病期 : 疾病の経過をその特徴によって区分した時期
播種 : 癌細胞が体の中で散らばった状態
肉腫 : 悪性腫瘍のうち、線維、血管、骨、軟骨、筋肉、造血組織などから発生するもの