九州大学病院のがん診療

眼部腫瘍

内科的治療

網膜芽細胞腫

眼球保存治療では当院で抗がん剤点滴(VEC療法)と赤外線レーザー(経瞳孔温熱療法)を行い、病状により国立がん研究センター中央病院 眼腫瘍科と共に抗がん剤の眼動脈選択動注、抗がん剤硝子体内注射、小線源縫着などを行います。また眼球摘出後に組織診断にて視神経浸潤や脈絡膜浸潤が確認された場合には、全身化学療法を行います。

悪性黒色腫(脈絡膜・結膜)

切除不能な転移症例に関しては、免疫チェックポイント阻害薬分子標的治療薬(BRAF/MEK阻害剤)、化学療法(アルキル化剤)を行うことがあります。投与に先立ち、腫瘍細胞のPD-L1の発現や、遺伝子変異を調べる検査を行うことがあります。

眼内悪性リンパ腫

抗がん剤(メトトレキサート)の局所投与や全身投与を行います。脳病変発生予防のため、腫瘍内科と連携して抗がん剤の大量投与(点滴および髄注)などを行うこともあります。脳病変があれば放射線治療を併用することもあります。

眼周囲(結膜、眼瞼、眼窩)の悪性リンパ腫

高悪性度リンパ腫の場合、および病期II以上の低悪性度リンパ腫の場合、R-CHOPなどの全身化学療法を行います。

角結膜上皮内癌・扁平上皮癌

主に腫瘍切除後の再発リスク軽減のために、抗腫瘍薬のフルオロウラシル(5FU)の点眼を行うことがあります。

用語解説

VEC : ビンクリスチン+エトポシド+カルボプラチン併用療法
温熱療法 : 温熱を利用したがんの治療方法
小線源縫着 : 放射性物質を一時的もしくは長期にわたって組織内または周囲に配置して局所の放射線治療をおこなう方法
化学療法 : 化学物質によってがんや細菌その他の病原体を殺すか、その発育を抑制して病気を治療する方法
悪性黒色腫 : 色素細胞(メラノサイト)の癌化によって生じる悪性腫瘍
免疫チェックポイント阻害薬 : 免疫療法のひとつ。がん細胞により抑制されていた免疫機能を活性化させる
分子標的薬 : 癌に関与する遺伝子や遺伝子産物を標的とした新しい薬剤による治療法
悪性リンパ腫 : リンパ系組織から発生する悪性腫瘍
メトトレキサート : 抗がん剤の一種
病期 : 疾病の経過をその特徴によって区分した時期