九州大学病院のがん診療

原発不明がん

院内がん登録情報

2018年から2022年に原発不明がんとして九州大学病院で初回治療された患者さんは61名です。非常に少ないですが、原発不明がんの場合には、原発部位をみつけて、原発部位および病気の拡がりに応じた適切な治療方針をたてることが非常に重要で、安易に「原発不明がん」という診断に終わらせない努力が必要です。必要かつ十分な診察や検査を行ったにも関わらず、どうしても原発部位が特定できなかった患者さんの数ということになります。
これら原発不明がんと診断された患者さんのがんの組織型(がん細胞の種類)で内訳を図2に示します。がん(悪性)とは診断されたもののそれ以上の分類が不能だったものが最多で、全体の46%であり、次いで腺がん25%、悪性黒色腫8%、扁平上皮がん7%となっています。
次に、原発不明がんの患者さんに対して行われた治療の内容について説明します。九州大学病院では2008年6月より、臓器別のがん診療部会を設け、その中で各領域の専門家が集まり、患者さん毎に治療方針の決定や検証を行っています。原発不明がんに関しては、原発不明がん部会(腫瘍内科医、総合診療科医、放射線科医、病理診断医、看護師で構成)で行っております。図3は、2018年から2022年までに、原発不明がんに対して行った治療法別の内訳を示しています。化学療61%、放射線療法31%、手術13%と、転移がきっかけで発見されるため、化学療法の比率が高くなっています。放射線治療や手術も併用されることが多いですが、原発不明がんは色々な種類のがんを含み、進行度も異なるので、画一的な治療方針では対応が困難です。発生部位、細胞の種類(組織型)、病気の拡がり、全身状態等を総合的に検討して、患者さん毎に最適な治療方針を決定しています。

用語解説
化学療法 : 化学物質によってがんや細菌その他の病原体を殺すか、その発育を抑制して病気を治療する方

原発不明がん 2018-2022年症例のうち悪性リンパ腫以外

図2 組織型別症例数(症例20、21、30、31)

図3 治療方法内訳(症例20、21、30、31)