九州大学病院のがん診療

多臓器腫瘍

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はじめに

がんの治療には大きく内科的治療(抗がん剤)、外科的治療(手術)、放射線治療があります。

以前より大腸がんにおいては転移があっても手術可能であれば切除したほうが長期生存が得られることが知られていました。近年化学療法の進歩に伴う高い抗腫瘍効果・延命効果、手術の進歩に伴う切除症例の拡大などそれぞれの治療法の進歩により、診断時は転移のため切除困難と考えられても、治療に伴い根治切除が期待できるようになるいわゆるconversion therapyを期待できる患者さんが増え、長期間の生存が得られるようになってきています。このように治療が奏効した場合、長期延命を目指して他の治療法に変更すべきか、そのまま治療を継続するのか判断を迫られることになりますが、1つの診療科だけでは判断に苦慮します。

転移を有する患者さんに対してどの治療法が最も適切であるのか、治療内容が進歩・複雑化した現在のがん治療においては単独の診療科で判断するのは困難であり、多数の診療科が集まって議論を出来る場として多臓器腫瘍部会が設置されました。

関係診療科・部門

内科(血液・腫瘍・心血管内科、消化管内科)、外科(消化器・総合外科、臨床・腫瘍外科)、放射線科、泌尿器・前立腺・腎臓・副腎外科、整形外科、顔面口腔外科、病理診断科、薬剤部、九州大学がんセンター、看護部

当部会での検討内容

多臓器腫瘍部会は毎週金曜日の朝に開催しています。

2016年1月から2017年8月にかけて計77回開催し、図1・2がその内訳および検討内容になります。

およそ160例につき検討を行い、多くは図1に示しています通り食道がん・胃がん・大腸がんなどの消化器がんが対象ですが、原発不明がん(3例)や近年分子標的治療薬による治療が行われるようになった甲状腺がん(4例)など多様ながん種について検討を行っています。

検討内容は図2に示しておりますが、手術の根治性、術後補助化学療法あるいは進行癌に対する化学療法のレジメン、根治的照射および緩和的照射を含めた放射線治療の適応などを内科系、外科系、放射線科としての視点から議論を交わし、最適な治療方針の選択を目指しています。また診断が困難な患者さんに対する診断を目的とした画像検査・生検についての検討を行うこともあり、診断・治療につき幅広く議論を重ねています。

具体的には、食道がんについてはstage Iの症例に対しては根治的化学放射線療法は手術と同等の治療効果であり、stage II、IIIの症例に対しては術前化学療法が標準治療に組み込まれ、またどのstageにおいても緩和的(化学)放射線療法の適応となることから集学的治療の対象となる患者さんが多く、検討症例が多くなっています。

大腸がんについては先述の通り手術できなかった症例が手術できるようになり、手術にconversionするのか化学療法を継続するのか検討を行う症例や、あるいは診断時に大腸の狭窄が進行しており、化学療法を行うべきか、先に原発巣を切除ないし人工肛門を造設した後に化学療法を開始したほうが良いのか、直腸がんの局所再発に対する放射線療法につき検討を行う症例も多くみられます。

胃がんについては腹膜播種に伴う腸閉塞に対するバイパス術、出血に対する手術・放射線治療の適応、術後補助化学療法の是非などにつき検討を行っています。

肉腫については根治的切除の可否、進行癌に対するレジメン選択につき検討を行っています。

また、がんの骨転移に伴う疼痛を訴えられる患者さんに対する鎮痛を目的とした緩和的放射線治療の適応なども検討しております。


  • 図1 検討がん種

  • 図2 検討内容

まとめ

がんの治療の進歩に伴い、またがんの進行による病状の変化に対し、複数の診療科で検討を行い、最適な医療を提供できるよう今後も努めていきます。