九州大学病院のがん診療

小児がん

診断

小児期に比較的多くみられる悪性腫瘍は白血病・悪性リンパ腫などの血液・リンパ系腫瘍ですが、その他に成人では極めてまれな悪性固形腫瘍が、新生児〜思春期まで年齢に応じて種々の部位に発生します。悪性腫瘍と良性腫瘍の境界であるような病変や、それらが混在した混合病変、また多発している病変もみられることがあります。小児期に発生する血液腫瘍、脳腫瘍、悪性固形腫瘍などを総称して「小児がん」といいますが、多種多様な「小児がん」の詳細な種類を正確に診断し悪性度を判断することが、適切な治療選択と望ましい治療効果につながります。

病理診断

腫瘍の大きさと場所によっては腫瘍全体を切除できることもありますが、多くの場合は腫瘍の一部を切除する「腫瘍生検」がまず行われます。それらの標本を非常に薄い切片にし、主としてヘマトキシリン-エオジン染色を施して顕微鏡的に診断します。免疫組織化学的検索は、小児がん診断のための組織起源や、小児がんの特徴である多彩な分化を示す細胞・組織の存在を証明するために役立つのみならず、腫瘍の分化度やがん遺伝子関連蛋白など、予後因子の検索にも有用です。デジタル画像を用いた病理診断も普及し遠隔病理診断が可能となったため、複数の病理医が連携することでより正確な診断を行うことができるようになりました。

免疫学的診断

フローサイトメトリーを用いた免疫学的検査は、白血病などの血液腫瘍の診断・分類において非常に重要です。特に急性リンパ性白血病では、白血病細胞の免疫学的タイプの違いにより治療法が大きく異なるため、本検査は必須です。さらに、近年は予後と強く関連する微小残存病変の検出に用いられ、適切な治療強度の評価のために重要な検査となりつつあります。

細胞遺伝学的診断

小児がんを含め多くのがんは遺伝子異常の蓄積により発生することが明らかになってきました。染色体異常は、がんの発生や進展を支配する遺伝子異常と密接に関連しているため、実際小児がんの診断や治りやすさの予測として広く臨床に用いられています。近年では遺伝子変異解析技術の目覚ましい進歩により、複数のがん遺伝子を網羅的に検査する「パネル検査」が保険適応となりました。遺伝子変異に応じた標的治療が可能になってきています。このように、癌細胞で起こっているゲノムや遺伝子の変化を分析して診断と治療を行う「プレシジョンメディシン」が推進されています。

腫瘍マーカー

腫瘍細胞が産生する物質を体液(血液や尿)で測定することにより、診断・病態の把握に有効であるものを腫瘍マーカーと言います。腫瘍マーカーを測定することで早期に診断を予測することができ、病気の進み具合を予測し治療計画を立てることが可能になります。治療中には治療反応性の評価に、治療終了後には再発の予測に有用です。

画像診断

診断にはなくてはならない検査法であり、がんの検出・質的診断・病期診断・治療効果判定・転移/再発検索など、それぞれにおいて重要な役割を占めています。小児がんにおいては、X線被爆を含め成人よりさらに低侵襲な画像診断法が求められること、撮像対象が小さいため高精細な画像が必要とされること、撮像時には鎮静処置を要することが多いことなどが特徴です。単純X線・超音波検査CTMRI・核医学検査(PETなど)があります。

用語解説

悪性リンパ腫 : リンパ系組織から発生する悪性腫瘍
フローサイトメトリー : 細胞の数や性質を調べるための検査
網羅的 : 検査のひとつ
腫瘍マーカー : 血中濃度や尿中濃度を調べることにより腫瘍の有無や場所の診断に用いられる物質の総称
病期 : 疾病の経過をその特徴によって区分した時期
低侵襲 : 身体にかかる負担が少ない
超音波検査 : 超音波を当て、反射する反射波を画像処理し臓器の状態を調べる検査
CT : コンピュータ断層法。身体の横断断層を撮影する特殊なX線装置
MRI : 強い磁石と磁気を利用して体の内部を検査する機器
PET : がん細胞だけに集積する検査薬を体内に取り込み専用の装置で体を撮影する画像診断法