九州大学病院のがん診療

咽頭がん

Q&A

  • 咽頭がんとは、どのような病気ですか。
    咽頭には上咽頭(鼻の突き当たり付近)、中咽頭(舌の付け根まで)、下咽頭(食道の入り口)の3つがあり、それぞれ病態が異なります。原因としては上、中咽頭がんではウイルスが関与しているものもあります。中下咽頭がんはアルコールや喫煙などが原因のひとつとしてよく知られています。
  • 咽頭がんの症状はどのようなものがありますか。
    上咽頭がんは初期症状として鼻詰まりや鼻出血、頑固な頭痛、頸部のリンパ節の腫脹として発見される事が多いのですが、無症状のものも多いとされています。進行すると耳管(耳と鼻をつなぐ管)が詰まって難聴を生じたり、脳に進展することで物の見え方に異常をきたすこともあります。 中咽頭がんは咽の腫れ、違和感、血痰のほか食べ物を飲み込む際に痛みを生じることが初発症状となります。進行すると、飲み込みにくさ、声嗄れ、呼吸困難などが生じてきます。 下咽頭がんは、かなり進行してからでないと症状が出にくいがんとして知られますが、進行に従い、咽の違和感、血痰、食べ物を飲み込む際の痛み、飲み込みにくさ、声嗄れ、呼吸困難などが生じてきます。全ての咽頭癌で頸部のリンパ節腫脹が初発症状となることがあります。
  • 咽頭がんの治療法について教えてください。
    咽頭がんは一般に放射線、手術、抗がん剤を組み合わせた、いわゆる集学的治療を行います。 上咽頭がんは放射線感受性が強く、まず放射線治療と抗がん剤を用いて治療を行い、病変が残存すれば手術を行います。 中咽頭がん、下咽頭がんは早期がんは部分切除あるいは放射線治療が中心になりますが、進行がんでは放射線治療と化学療法、手術療法を組み合わせて治療します。
  • 咽頭がんの手術はどのようにしますか。
    上咽頭がんは放射線治療の感受性が良いため、主として頸部リンパ節の残存病変に対し頸部郭清を行います。中咽頭がんも放射線治療で残存した病変を摘出しますが、残存の場所により、扁桃腺を摘出する場合や、舌の一部を摘出したり、声を出す喉(喉頭)を合併切除したりします。欠損が大きい時は、胸や腹の筋肉、皮膚を用いて形成します。頸部リンパ節の残存病変に対し頸部郭清を行います。下咽頭がんは手術を要する場合は小さな病変に対しては、一部を切除するのみで良い事もありますが、ほとんどの場合喉頭、食道の一部を合併切除することが必要となります。その場合、腸の一部を用いて食道を再建します。
  • 咽頭がんの手術を受けた場合、どのような体の障害が残りますか。
    手術の方法でも述べましたが、咽頭がんの術後は欠損部位がどこかによって様々な後遺症が残ります。特に下咽頭がんの場合、声を出すのに不可欠な喉頭を合併切除することが多く、その場合、声帯を用いた喉頭発声はできなくなります。電気喉頭、人工喉頭などの器具を用いて発声することになります。その他、頸部リンパ節の残存病変に対し頸部郭清を行った場合は、神経の障害が生じる事もあります。
  • 咽頭がんの化学療法にはどのような方法がありますか。
    咽頭がんに感受性のある抗がん剤を用います。放射線治療と併用して、内服で抗癌剤を使ったり、静脈から点滴で用いる事が多いですが、足の動脈からカテーテルという細い管を入れて直接患部に注射する動注化学療法を行うこともあります。
  • 咽頭がんは、放射線で治療できますか。
    九州大学病院では基本的に放射線治療と抗がん剤で治療することで、可能な限り臓器温存を目指していますが、放射線感受性は個体差、臓器差の他、病期にも差があるためすべての方で放射線治療のみで治療できるとは限りません。一般的に上咽頭や中咽頭がんは放射線の感受性が高い場合が多く、逆に頸部リンパ節や下咽頭がんは効果に差があります。