九州大学病院のがん診療

甲状腺がん

はじめに

甲状腺は頸部の正中下方で、喉頭・気管の前面を取り囲むように位置する器官です。蝶のような形をしており、全身の細胞の機能・代謝を調節する甲状腺ホルモンを分泌します。

甲状腺がんは初期の症状はほとんどなく、多くは検診などの頸部エコー検査で偶然発見されます。しかし、進行すると前頸部のしこりとして、もしくは転移したリンパ節がしこりとして触れるようになります。また、甲状腺のすぐ後ろには反回神経という声帯の運動に関わる神経が存在しているため、がんがこの神経を巻き込み神経麻痺が生じると声がかれることもあります。
甲状腺に発生するがんは一般に4種類のものに分けられ、それぞれに特徴があります(表)。なかでも、大部分を占めるのが、分化がんと呼ばれる乳頭がんと濾胞(ろほう)がんがです。これらのがんは、比較的穏やかで緩徐な進行であり、10年生存率も90%以上との報告が多く、他のがんと比較して予後の良いがんの一つとされます。
随様がんは、髄様がん全体の約30%が遺伝性で、遺伝性の場合は他の臓器にも腫瘍が多発することがあります。未分化がんは全体の1%以下と数は少ないものの、急激な増大、転移をきたすことが多く、とても悪性度が高く予後が悪いがんです。

このように、甲状腺がんは、性質の異なるがんが混在しており、どのタイプのがんであるかを診断した上で、タイプに応じた適切な検査と治療が行われます。

  分化がん 髄様がん 未分化がん
乳頭がん 濾胞がん
頻度* 約90% 約5% 約1-2%
遺伝性疾患の場合あり
約1-2%
腫瘍の増大 遅い 遅い やや早い 極めて早い
治療 外科的治療が中心

**国立がん研究センターがん情報サービスを参考に作成