九州大学病院のがん診療

小児がん

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はじめに

小児がんとは乳幼児から思春期、若年成人まで幅広い年齢に発症するがんを指し、白血病、悪性リンパ腫、脳腫瘍、神経芽腫、腎芽腫、肝芽腫、網膜芽腫など多種多様ながん種からなります。小児がんは成人のがんと異なり生活習慣と関係なく、神経芽腫、腎芽腫、肝芽腫など「芽腫」と呼ばれるがんの原因は、胎児の体の神経や腎臓、肝臓、網膜などになるはずだった細胞が、胎児の体ができあがった後も残っていて、異常な細胞に変化し増殖した結果と考えられています。

小児がんは年間2,000〜3,000人が発症します(子ども10,000人あたり1人)。発見が難しく、がんの増殖も速いことから、40年前までは治らない病気とされてきましたが、1950年代にはそれまでの手術療法に加えて放射線治療が、1960年代には薬物療法(抗がん剤)が治療に効果があることがわかり、その後、多剤併用化学療法や造血幹細胞移植が適用され、さらには副作用・合併症に対する治療(支持療法)が進歩したことにより治癒率が向上しました。これは小児がんの治療に携わる臨床医、研究者、看護師、その他の医療関係者や患者さん・家族が個々に努力を重ねてきた成果ともいえます。今では小児がんと診断された子どもの70〜80%が治るようになりました。それでも小児がんは子どもの死因の1位(10〜14歳の1位、5〜9歳の2位)を占めているのが現状であり、さらなる治療成績のための努力が必要です。

一方で晩期合併症が問題となっています。強力な治療による合併症に加え、成長発達期の治療により、治癒した後も発育・発達の障害、内分泌障害、臓器障害、性腺障害、高次脳機能障害、二次がんなどの問題が生じます。たとえば、進行期でも90%程度の治癒率が得られるホジキンリンパ腫においては、診断から10年以上経過しても二次がん、心機能障害、甲状腺機能低下症などの晩期合併症を併発する割合が年々増加することが明らかになっています。

小児がんのさらなる治療成績向上をめざし、より安全に成長に見合った治療を行うことにより晩期合併症を少しでも減らすこと、さらには、がんの子どもだけではなくその家族が安心して治療を受けることができる場を提供することが小児がん診療に携わる者の最大の任務です。

九州大学病院は2013年に小児がん拠点病院に制定されました(全国15病院、九州では当院のみ)。小児がん拠点病院では、専門家による集学的医療の提供、小児がん患者さんの長期フォローアップ、患者さんとその家族に対する心理社会的な支援、適切な療養・教育環境の提供、小児がんに携わる医師等に対する研修の実施、セカンドオピニオンの体制整備、患者さんとその家族、医療従事者に対する相談支援等の体制を整備することとされています。九州地区の診療のトップとして積極的に多施設共同臨床研究、新規薬剤、免疫療法・ワクチン療法などの治験を行っています。また、2015年4月に小児科・小児外科・小児歯科医、精神科医、看護師、薬剤師、心理士、理学療法士、地域医療連携センターなど多職種からなる小児緩和ケアチームを発足し、幅広く行き届いた子どもと家族に優しい診療を目指した活動を開始しました。

日本全体では白血病・リンパ腫のグループと固形腫瘍のグループが合併し、2015年にNPO法人日本小児がん研究グループ(The Japan Children's Cancer Group、JCCG)が設立され、欧米の研究グループとも協力しながら小児がんの最先端で最良の治療成果を日本や世界各国の子ども達に届けることを目指した体制が整いました。

小児がんの子ども・家族を中心として、個々の職種、チーム、病院、日本、世界全体が皆で協力する体制ができつつあります。小児がんが合併症なく治る日が来るのも、そう遠くないのではないでしょうか。

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