九州大学病院のがん診療

小児がん

内科的治療

化学療法

小児がん治療において、化学療法は中心的役割を担っています。成人におけるがんと比較して化学療法がよく効く(感受性が高い)種類が多いため、診断時に遠隔転移があったとしてもあきらめずに治癒をめざして治療を開始することができるのです。小児がん治療では複数の抗がん剤を組み合わせた多剤併用化学療法を行うことが基本です。最近では、支持療法の発達により、以前に比べて治療強度の高い化学療法を比較的安全に行う事が可能となりました。しかし、副作用の程度が強い場合には死亡の可能性(多剤併用化学療法において死に至るほど重篤な副作用が発生する割合は、全体の1〜3%)、あるいは永続的に障害が残る可能性もあります。障害の程度や回復の程度は人によって異なります。更に、何年も経ってから影響が表面化してくるものもあります(下表)。

化学療法によって予想される有害事象
吐き気・下痢・便秘など胃腸の症状
口内炎・結膜炎など粘膜の症状
脱毛、皮疹、爪・皮膚色の変化など外見上の症状
白血球が減少する→感染症を起こしやすい(発熱)
赤血球が減少する→貧血になる
血小板が減少する→出血しやすい状態になる
播種性血管内凝固症候群(血液凝固反応が全身の血管内で無秩序に起こる症候群)
薬に対するアレルギー
肝臓・腎臓・心臓・膵臓などの臓器の障害
聴力障害
成長障害、ホルモン障害
二次がん

造血細胞移植療法

造血細胞移植には、自分自身の造血幹細胞を用いる自家移植と自分以外(血縁やバンクなど非血縁)の造血幹細胞を用いる同種移植があります。また、移植細胞を基準にして考えると、骨髄移植、末梢血幹細胞移植、臍帯血移植といった3種類に分類されます。さらに、前処置として用いる化学療法の強さを基準にして考えると、骨髄破壊的移植(通常移植)、骨髄非破壊的移植(ミニ移植)に分けられます。造血細胞移植は決して「夢の万能治療」ではありません。化学療法のみの場合に比べ、重篤な有害事象の発生率は確実に増加します(下表)。

造血幹細胞移植による主な副作用
抗がん剤による重篤な副作用
重篤な感染症
VOD(肝臓の血管がつまり、体重増加、肝腫大、ビリルビン上昇などを起こす)
TMA/TTP(血管が血栓でつまり、溶血性貧血、血小板減少、内臓障害などを起こす)
急性および慢性の移植片対宿主病(GVHD)
生着不全(移植された造血幹細胞が増えてこないため再移植が必要となる)
内分泌障害(性腺機能不全、汎下垂体機能不全、甲状腺機能低下)
二次がん

 

小児がんにおける造血細胞移植の適応は、難治性の白血病、再発白血病、化学療法の感受性が高い固形腫瘍などです。多くの場合、白血病には同種移植、固形腫瘍には自家移植が行われます。それぞれの移植にメリット・デメリットがあります。

CAR-T細胞療法(キムリア)

九州大学病院は白血病やリンパ腫の新たな治療薬である「CAR-T細胞療法(キムリア)」の提供可能施設として認定されました。CAR-T細胞療法は「キメラ抗原受容体(CAR)」を導入し、がん細胞などを攻撃するように作り替えたT細胞を用いた治療です。本治療は

①再発・難治性のCD19陽性B細胞性急性リンパ芽球性白血病(25歳以下)
②再発・難治性のCD19陽性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
を対象としています。

また、九州大学病院はがんゲノム中核拠点病院に指定され、がん遺伝子パネル検査を保険診療で行う事が可能となりました。今後、小児がん領域においても分子標的治療や免疫療法といった新規治療法の開発が期待されます。現在国内で進行中の臨床試験および治験が進行中で、当院でも参加が可能なものがあります。新規治療に関する情報提供を希望される場合は、主治医にご相談ください。

用語解説
化学療法 : 化学物質によってがんや細菌その他の病原体を殺すか、その発育を抑制して病気を治療する方法
支持療法 : 最も広く行われている精神療法の一つで、患者の精神的・肉体的なケアのことを指す。不安や緊張、恐怖といった症状を取り除き、心理的な安定と適応の改善をはかる療法
播種 : 癌細胞が体の中で散らばった状態
骨髄破壊的移植 : 患者の骨髄細胞を抗がん剤および放射線照射にて死滅させ、そこへ新たな骨髄細胞を輸注することにより造血機能を再生させる治療
骨髄非破壊的移植 : 患者の造血機能すべてを死滅させずに新たな造血細胞が拒否されないだけの抗がん剤および放射線照射を行い、輸注することにより造血機能を再生させる治療
分子標的治療 : 癌に関与する遺伝子や遺伝子産物を標的とした薬剤による治療法