九州大学病院のがん診療

腎がん

Q&A

  • 腎がんの症状にはどのようなものがあるのですか。
    古典的には1.血尿、2.背中、脇腹の痛み、3.腹部のしこり、違和感が、3主徴と言われていますが、発熱や体重減少をきたす事もあります。進行すれば、肺転移による血痰、せき、骨転移による骨折、骨の痛みをきたす事もあります。ただ最近の傾向として、健診や他の検査中に偶然発見される無症状の腎がんが増えています。
  • 腎がんの検査にはどのようなものがありますか。
    検尿では血尿の有無、採血では貧血の有無、全身的炎症所見(CRPの上昇や赤沈の亢進)に注意します。また、高カルシウム血症、LDH高値も予後不良因子と言われ、ALP高値は骨転移の存在を示唆することもあり、注意します。画像検査では腹部超音波検査、腹部CT検査、腹部MRI検査、骨シンチなどを行ないます。
  • 超音波検査で腎臓にカゲがあると言われました。どうしたら良いでしょうか。
    必ず専門医(泌尿器科医)を受診して下さい。
  • 腎がんの治療には、どのような治療がありますか。
    腎癌の治療の基本は手術療法です。限局癌では当然手術を行ないますが(術式は次を参照)、転移のある患者さんでも状態が許せば、手術(可能ならば転移巣切除も)を行います。手術ができない転移がんに対しては、薬物療法(以下の項目を参照)を行います。
  • 腎がんの手術療法について教えてください。
    限局した腎癌の場合、原則的には癌の摘出手術を行います。近年、部分切除が可能な症例が増えて来ており、ロボット支援腎部分切除術が2016年4月に保険収載されてから、ロボットが導入された施設では症例数も増えて来ています。ロボット支援腎部分切除術は、縫合が容易で、腎血流の阻血時間が腹腔鏡手術と比べ短くてすむことより、腎機能が温存できるという利点があります。部分切除が困難な場合は、根治的腎摘除の適応で、腎周囲脂肪とその外のGerota筋膜を含めた片方の腎臓をすべてを摘出する手術となります。最近は腹腔鏡下に根治的腎摘除術を行なう施設が増えています。
  • 腎がんのや薬物療法にはどのような方法がありますか。
    いわゆる抗がん剤はほとんど効きません。腎癌に対する薬物療法は、まず分子標的薬による治療を行います。現在、分子標的薬はチロシンキナーゼ阻害剤が4種類、mTOR阻害剤が2剤使用可能で、治療効果がなくなったり副作用で使用できなくなった場合には他の薬に逐次変更して治療を行います。それぞれの薬には特徴的な副作用があり、注意が必要です。また、2016年には免疫治療剤としてニボルマブという薬も保険承認されました。これは、がん細胞が免れている免疫機構のブレーキを外して癌に対する免疫を強めることによって治療する新しい薬で、副作用の頻度や重篤度は、これまでの分子標的薬より一般的には軽いと報告されています。しかし、自らの免疫によって正常な体の機能が失われる特殊な副作用があり、十分な注意が必要です。このように腎癌に対する薬物療法は、それぞれの薬剤に特徴的な作用と副作用がありますので、患者さんとご家族にその内容を十分理解して頂くことが大切です。そして患者さん本人も自分の状態(全身状態、血圧、皮膚の様子など)を定期的に報告し、副作用の予防に心がけてもらう必要があります。