九州大学病院のがん診療

腎がん

はじめに

腎臓は、肋骨の下端の高さで背部にある臓器で、尿を造ったり、血圧を調節するホルモンや造血に関係するホルモンを産生したりしています。腎がんは主に腎臓の近位尿細管上皮を由来とするがんで、50歳代から70歳代で発生することが多く、女性よりも男性に多く見られます。その危険因子としては肥満や喫煙が挙げられ、喫煙は腎がんのリスクを2倍にするといわれています。北欧で罹患率が高く、乳製品の消費量と相関しているとの報告もあります。また、フォン・ヒッペル・リンドウ(von Hippel-Lindau:VHL)病や結節硬化症多発性嚢胞腎(たはつせいのうほうじん)をもつ患者さんでは、腎がんの発生が多くなることが報告されています。

腎がんの罹患率は、人口10万人あたり男性12.9人、女性6.2人(2001年)であり、年々増加しています。2005年の調査によると、死亡率は人口10万人あたり男性で6.6人、女性で3.3人、男女とも12番目に多いがんです。2011年の国立がん研究センター・がん対策情報センターの地域がん登録全国推計値では、2025年には腎がん患者さんの50%以上が75歳以上の高齢者となることも予想されています。

用語解説

フォン・ヒッペル・リンドウ : 常染色体優性遺伝性疾患で、多発腫瘍性疾患。
結節硬化症 : 全身性疾患であり、様々な部位に過誤腫と呼ばれる良性腫瘍などが発生する疾患。
多発性嚢胞腎 : 腎臓に嚢胞(分泌物が袋状にたまったもの)が多発してできる疾患。