九州大学病院のがん診療

膀胱がん

Q&A

  • 膀胱がんの症状には、どのようなものがあるのですか。
    肉眼的血尿(尿に血液が混ざり肉眼的に赤くなること)で発見されることが最も多いです。その他、頻尿、排尿時の下腹部~尿道部の痛み、尿意切迫感(尿が我慢できずに漏れそうになること)等の症状も出現することがあります。 
  • 膀胱がんの検査には、どのようなものがありますか。
    簡便な検査として、尿検査と尿細胞診(尿中のがん細胞を顕微鏡でチェックする検査)があります。肉眼的血尿を認めた場合は膀胱鏡を尿道口(尿の出口)から挿入し膀胱内を観察します。検査に伴う痛みを軽減するため当科では柔らかい材質でできている軟性膀胱鏡を使用しています。膀胱の筋層以上の広がりが疑われる病変を認めた場合はCTやMRIを撮影したり、骨転移の有無を調べる骨シンチを撮影することがあります。また、膀胱癌の患者さんは、腎盂尿管がんを合併することが多く、腎盂尿管造影検査や尿管鏡を行うこともあります。
  • 膀胱がんの治療には、どのようなものがありますか。
    手術療法は転移を認めない膀胱がんの患者さん全てに適応があり、内視鏡的にがんを切除する経尿道的手術と膀胱全摘術があります。膀胱の筋層以上に癌が広がって転移を認めない進行癌の患者さんは、可能であれば補助的な抗がん剤治療の後に、膀胱全摘術を行うことが標準治療です。また、手術が困難な全身状態の悪い方には放射線療法を行うこともあります。転移を伴う患者さんに対しては抗がん剤を使用した化学療法を行います。
  • 膀胱がんに内視鏡を使った手術はできますか。
    膀胱内にがんを疑う病変を認めた場合は、まず尿道口から内視鏡を挿入し内視鏡的に切除します。顕微鏡で検査し膀胱表面にとどまる表在がんであれば内視鏡手術そのものが根治治療となります。この場合は、術後に再発予防のため膀胱内に抗がん剤やその他の薬物を注入します。膀胱の筋肉に進行している場合は膀胱全摘術が標準治療で、最近は腹腔鏡下に手術を行う施設も増えてきています。 
  • 膀胱がんの手術療法について教えてください。
    上記の内視鏡を使用した手術の他に開腹手術や腹腔鏡下手術があります。膀胱の筋肉に進行している場合や将来的に筋肉に進行する可能性が高いと考えられる場合には開腹手術や腹腔鏡下手術による膀胱全摘除術を行います。多くの場合は膀胱を隣接臓器(男性;前立腺・精のう・尿道、女性;子宮・卵巣・膣・尿道)と共に摘出し、新しい尿の通り道を作成します。新しい尿の通り道作成のためには膀胱の代わりに腸管を使用します。右下腹部に新しい尿の通り道を作成することが多い(回腸導管法)ですが、尿道を温存できる場合は膀胱の位置に腸管を納めることで(新膀胱法)ボディーイメージを損なうことなく温存した尿道からの元通りの排尿も可能です。稀ですが、膀胱を部分的に切除し得ると判断した場合は、がんの部分を含めて膀胱を部分的に切除することもあります。
  • 膀胱がんの治療で、経尿道内視鏡手術と膀胱全摘術の選択はどのように決めるのですか。
    膀胱がんは、前述の様にがんの深達度で筋層非浸潤性がんと筋層浸潤性膀胱がんに分類されます。筋層非浸潤性に対しては前述の内視鏡手術が根治術になります。筋層浸潤性膀胱がんの場合は転移がなければ、内視鏡手術による診断後に基本的には膀胱全摘術を行います。また、筋層非浸潤性と診断しても将来的に筋肉に進行する可能性が高いと考えられる場合にも膀胱全摘術を勧めることがあります。
  • 膀胱全摘術とはどのようは手術ですか。
    膀胱を隣接臓器(男性;前立腺・精のう・尿道、女性;子宮・卵巣・膣・尿道)と共に摘出し、新しい尿の通り道を作成します。骨盤内のリンパ節も摘出します。下腹部を切開して行い、手術は平均6~7時間です。新しい尿の通り道作成のためには膀胱の代わりに腸管を使用します。右下腹部に新しい尿の通り道を作成することが多い(回腸導管法)ですが、尿道を温存できる場合は膀胱の位置に腸管を納めることで(新膀胱法)ボディーイメージを損なうことなく温存した尿道からの排尿も可能です。
  • 膀胱がんの化学療法にはどのような方法がありますか。
    前述の様に、転移を認める膀胱がんの患者さんでは、腎機能が良好な場合は化学療法を行います。また最近では効果的にがん細胞を死滅させて予後を改善させるために膀胱全摘術の前にも3コースの化学療法を行うことが多くなっています。どちらの場合も、2種類の抗がん剤を組み合わせるGC療法を点滴で行います。1コースは約3~4週間です。主な副作用は骨髄抑制・嘔吐・食欲不振・腎機能障害・脱毛等です。