九州大学病院のがん診療

大腸がん

診断

大腸内視鏡検査

内視鏡スコープを肛門から挿入して、全大腸(直腸、S状結腸、下行結腸、横行結腸、上行結腸、盲腸)を観察する検査です。検査を受ける前に大腸を下剤で洗浄してきれいにする必要があるため、検査前日の眠る前と検査当日朝から下剤を飲む必要があります(内服する下剤の種類は異なります)。検査に対して苦痛が強い方には、希望により鎮静剤を使用して苦痛の軽減を図ります。病変(がん、ポリープなど)を発見した場合または病変が疑われる場合には、一部組織を採取(生検)して顕微鏡で細胞の観察を行い、病変の種類および悪性か良性かの診断を行います(病理診断)。最近では病変の表面構造を拡大して観察することのできる拡大内視鏡が普及してきており、病変に特殊な染色を施した後や画像強調内視鏡(NBIやFICE)を用いて表面模様を観察することで良・悪性の判断を行い、悪性である際は、その深さを推測することが可能になってきています(拡大内視鏡検査)。また内視鏡から病変に対して超音波(エコー)を直接あてることでがんの深さやリンパ節転移の有無を診断することができます(超音波内視鏡検査)。

注腸造影検査

肛門から検査用の管を挿入し、そこからバリウムと空気を注入して体の向きを変えながらX線写真を撮る検査です。検査を受ける前には大腸をきれいにする必要があり、検査前日は検査食を食べて、夜に下剤を服用します。検査後にもバリウムが腸管内に残らないように下剤の服用を行います。この検査で大腸がんの位置や大きさを客観的に診断できます。また大腸がんのある場所では粘膜模様やひだの異常、腸管壁の変形の有無を観察し、その所見から病変の深さを診断します。

CT検査/MRI検査

CT検査(コンピューター断層撮影法)は、身体に多方向からX線を照射して得られた情報をコンピューターで処理し身体の断面像を描出する検査で、MRI検査(核磁気共鳴画像法)は磁気の力を利用して身体の断面像などを描出することのできる検査です。造影剤を使用することで、そのコントラストにより診断能が上昇しますが、強い腎障害のある方や造影剤にアレルギーのある方は基本的に使用できません。大腸がんでは一般的にCTで大腸病変の評価とリンパ節転移や遠隔転移(肺や肝臓など)を行います。最近では、大腸に特化した大腸CT(CTコロノグラフィ)という新しい3次元CT検査があります。これを用いると、大腸内視鏡や注腸造影のような画像で大腸がんを診断することが可能です。MRIは直腸がんの診断や肝転移の詳しい検査に有用です。

腹部超音波検査

超音波(エコー)検査は、体内にある臓器などに超音波が当たって跳ね返ってきた信号が映像になって映し出される検査です。主として肝臓への転移の診断に用いられます。

PET検査

がん細胞は分裂が盛んで、エネルギー源となるブドウ糖を正常な細胞よりも何倍も取り込むという性質を持っています。PET(陽電子放射断層撮影法)はその性質を利用した検査で、陽電子を放出するブドウ糖に近い成分(FDG)を体内に注射し、体内での薬剤の分布を画像化します。FDGが異常に集まる場所を見つけることで、がんの発生部位の特定や転移の診断に用います。

腫瘍マーカー

がんの種類によって多くのマーカーがあり、大腸がんではCEAやCA19-9が一般的です。ただし腫瘍マーカーの異常だけでは、大腸がんの有無や進行度合いの判断はできません。大腸がんが存在しても腫瘍マーカーが上昇しないこともあります。しかし腫瘍マーカーは定期的に測定して経過を追うことにより、がんに対する治療効果の判定やがんの再発の有無などの一つの指標となります。

用語解説
超音波内視鏡 : 超音波診断装置を伴った内視鏡
CT : コンピュータ断層法。身体の横断断層を撮影する特殊なX線装置
MRI : 強い磁石と磁気を利用して体の内部を検査する機器
超音波検査 : 超音波を当て、反射する反射波を画像処理し臓器の状態を調べる検査
PET : がん細胞だけに集積する検査薬を体内に取り込み専用の装置で体を撮影する画像診断法
腫瘍マーカー : 血中濃度や尿中濃度を調べることにより腫瘍の有無や場所の診断に用いられる物質の総称