九州大学病院のがん診療

大腸がん

院内がん登録情報

2018年から2022年に九州大学病院に初発で受診され、当院で初回の治療を受けた大腸がんの患者さんは、1,066例です。

図1は、九州大学病院で治療を受けた患者さんの進行度を我が国の大腸癌取扱い規約に従って集計したものです。リンパ節転移がない比較的早期の状態(ステージⅡまで)で発見された方が約5割ですが、ステージⅣの方も2割弱ほどあります。

図2はステージ別の発見経緯です。早期のステージではがん検診や健康診断、人間ドックで発見された方が多く、自覚症状があって受診された方は少ないことがわかります。

図3にステージごとの治療方法をまとめています。

  • ステージ0(がんが大腸の粘膜にとどまった状態で発見された場合)では、約8割が内視鏡による治療のみで治療が終了し、それ以外の一部の方に手術が行われています。
  • ステージI(がんが大腸の筋層まで浸潤し、リンパ節転移がない状態)では、多くの患者さんに腹腔鏡を含む外科手術が中心に行われています。九州大学病院における手術療法の特徴は、腹腔鏡を使った手術が多く行われていることですが、ステージⅠでは、約8割の方に内視鏡或いは腹腔鏡を使った治療が行われており、多くの方には抗がん剤による治療は行われていません。
  • ステージⅡ(がんが筋層を超えて浸潤しているが、リンパ節転移がない状態)でも手術療法を中心に治療が行われていますが、一部には抗がん剤による治療が併せて行われています。
  • ステージⅢ(リンパ節(腸管傍リンパ節・中間リンパ節)に癌の転移がある状態)では、手術のみで治療される症例は半数程度まで低下し、抗がん剤による治療症例が増加しています。
  • ステージⅣ(領域リンパ節より更に遠くのリンパ節(大動脈周囲など)へ転移するか、肝臓、肺、腹膜などへがんが転移した状態)でも、手術と抗がん剤を組み合わせて治療を行うことが多いですが、抗がん剤のみの治療となることもあります。

図4はステージごとの生存曲線(経過中の生存率をしめす曲線)です。やはりステージが進むと生存率が下がり、他臓器に転移を認めるステージⅣではあまり結果がよくありません。しかし、手術が有効であるステージⅢまでの場合は抗がん剤の治療との組み合わせなどにより、ステージⅢでも70%を越える生存率があります。

大腸 2018-2022年症例のうち癌腫のみ(悪性リンパ腫、肉腫等を除く)治療前・取扱い規約ステージ(大腸癌取扱い規約第9版)

取扱い規約について集計を行った。
※症例20:自施設で診断され、自施設で初回治療を開始(経過観察も含む)
 症例21:自施設で診断され、自施設で初回治療を継続(経過観察も含む)
 症例30:他施設で診断され、自施設で初回治療を開始(経過観察も含む)
 症例31:他施設で診断され、自施設で初回治療を継続(経過観察も含む)
※図4の生存曲線は全生存率として集計(がん以外の死因も含む)

図1 ステージ別症例数(症例20、21、30、31)

図2 ステージ別発見経緯(症例20、21、30、31)

図3 ステージ別治療法(症例20、21、30、31)
※重複あり

図4 Kaplan-Meier生存曲線(大腸)