九州大学病院のがん診療

骨軟部腫瘍

Q&A

  • 悪性骨腫瘍にはどのようなものがありますか。
    悪性骨腫瘍でもっとも多いものは、ほかの場所の腫瘍が転移してできたものです(転移性骨腫瘍)。 骨そのものからできる悪性の腫瘍(原発性骨腫瘍)には骨肉腫、ユーイング肉腫、軟骨肉腫等があります。骨肉腫やユーイング肉腫では痛みを伴う場合が多いです。
  • 骨肉腫とは何ですか。
    骨にできる悪性の腫瘍のなかで骨を作るものを骨肉腫といいます。10歳代に一番多く発症します。7-8割は膝のまわりにでき、残りは肩(上腕骨近位)に多くできます。しばしば痛みや熱感を伴います。レントゲン写真やCT、MRIなどの画像診断でおおよその予想はつきますが、確実に診断するためには腫瘍の一部を採取して顕微鏡で見る検査(生検術)が必要です。
  • 骨肉腫にはどのような治療法がありますか。
    現在、悪性骨腫瘍の治療には手術療法、化学療法、放射線療法の3つの方法があります。腫瘍の種類により、これらのうち1つだけでよいものもありますし、組合せて使う必要のあることもあります。一般に、骨肉腫の治療は手術療法と化学療法の組合せで行われています。また、骨肉腫に侵された骨は切除する必要があるため、ほとんどの場合で手術を行います。以前行われていた切断術に代わり、現在では患肢温存手術が主流です。しかし、手術だけでは、時間がたつにつれて肺などに転移をおこすことが多く、治ったことにはなりません。手術だけを行っていた時代には、取り残しのない手術をしても、約10〜20%の5年生存率でした。そのため、現在では手術の前と後に化学療法を追加して行うことが一般的です。その結果、現在の方法では、5年生存率が約70%程度まで改善されています。治療期間は、約8ヶ月から1年程度になることが多いようです。
  • ユーイング肉腫とはどのような腫瘍ですか。またどのような治療法があるのですか。
    ユーイング肉腫は、ユーイングという人が最初に報告した肉腫であるために名づけられました。ユーイング肉腫の細胞起源は不明ですが、この病気に特異的な遺伝子異常が認められ、病態の発現・進展に関与している可能性が報告されています。悪性骨腫瘍の5%前後にしかみられないまれな腫瘍で、骨肉腫と同じように若い年代にみられ、約4分の3の症例では20歳までに発症します。骨肉腫と異なる特徴は、関節部分から遠い骨の中心に病気が起こること、骨の腫瘍にもかかわらず骨外への進展が速く、周囲の軟部腫瘤(なんぶしゅりゅう)が著しいことなどです。初発症状は主に疼痛です。病気の進展に伴って、局所の熱感や圧痛がはっきりとしてきます。生検によって診断を確定した後に、化学療法、場合によっては放射線療法を行って可能な部位であれば手術療法を行います。手術では周囲の正常組織で包むように摘出します(広範切除術)。放射線や化学療法に対する反応はよいのですが、肺や骨への転移のために5年生存率は約50%程度と悪性度の高い腫瘍です。
  • 骨腫瘍の手術をしたあと、運動はできますか。
    手術によって切除した組織の大きさ部位によって異なります。切除した量が少ない場合には十分可能です。たくさんの組織を切除して人工の関節を使った場合などは、人工関節をなるべく大事に使うため、運動はお勧めしません。
  • 軟部腫瘍とはどのような病気ですか。
    軟部あるいは軟部組織とは、内臓、リンパ、脳や脊髄、骨などを除いた組織で、筋肉、血管、脂肪などのことをいいます。これらの軟部組織に由来する腫瘍を軟部腫瘍と呼びます。末梢神経に由来する腫瘍も軟部腫瘍に含んで分類されています。また、軟部組織に発生した悪性腫瘍を悪性軟部腫瘍または軟部肉腫と呼びます。まれな腫瘍ですが、多くの種類があります。
  • 軟部腫瘍の症状には、どのようなものがあるのですか。
    軟部腫瘍の主な症状は、「こぶ」の自覚です。腫瘍が筋肉の深いところにある場合、「はれ」として気づくこともあります。腫瘍の近くにある神経の圧迫などで痛みを感じることはありますが、多くの軟部腫瘍では悪性であっても痛みを感じることは少ないです。したがって、腫瘍である「こぶ」に気づいてから病院を受診するまで長い間放置されている場合もあります。悪性軟部腫瘍では急速に大きくなってくる場合があります。
  • 軟部腫瘍の検査には、どのようなものがありますか。
    画像診断としては、MRIが最も有用です。腫瘍があるのかどうか、腫瘍がどこにあるのか、腫瘍がどのように広がっているのかなどを確認することができます。造影剤を静脈注射することで、より詳しい検査を行うことがあります。その他に、X線、CT、超音波エコー、血管造影なども行われることがあります。しかしながら、これらの画像検査ではどのような腫瘍ができているのかを確定することはできません。腫瘍の良悪性や種類を決定するためには、組織の一部を採って顕微鏡の検査を行う「生検」が必要となります。生検には、針を刺して行う針生検術と切開を加えて行う切開生検術とがあります。針生検術は外来でも行えますが、より多くの組織片が必要な場合には手術室で切開生検術を行います。また、最近では一部の腫瘍において腫瘍細胞の遺伝子診断も行われるようになってきています。
  • 軟部腫瘍の治療には、どのようなものがありますか。
    生検によって得られた組織の診断に基づいて行います。基本的には手術による切除を行いますが、良性と悪性とでは切除の仕方が異なります。また、一部の悪性軟部腫瘍では、化学療法や放射線療法を併用します。
  • 軟部腫瘍の手術療法について教えてください。
    最近では悪性軟部腫瘍であっても、ほとんど切断術は行わずに手足を残すことが可能となってきています(患肢温存手術)。一般に良性腫瘍では腫瘍を覆う被膜と呼ばれる組織の部位で一塊として切除する方法(腫瘍辺縁切除術)によって切除可能ですが、悪性軟部腫瘍では再発の危険性を減らすために周囲の正常な組織で覆って切除する広範切除術が選択されます。術前の病理組織診断と画像診断をもとに手術計画を立てます。