九州大学病院のがん診療

骨軟部腫瘍

内科的治療

骨軟部腫瘍の治療では、抗がん剤を用いた化学療法を行うこともあります。手術後、再発転移を起こす腫瘍は、いろいろな検査を行っても発見できない小さな転移(微小転移)があると考えられます。このような微小転移を治療するため、術前や術後に抗がん剤の全身投与を行います(補助的化学療法)。また、肺転移巣やそのほかの転移巣の治療、あるいは手術ができない場合に、化学療法を行うこともあります。抗がん剤の多くは、原則として静脈から点滴で投与されますが、経口薬もあります。従来、化学療法は副作用が強く、つらい治療の1つでしたが、最近は副作用を軽減する新しい薬剤やいろいろな支持療法が行われて、小児から高齢の方まで広く行うことができるようになっています。

骨肉腫に対する化学療法

骨肉腫に対する化学療法のキードラッグは、アドリアマイシン(DXR)、イホスファミド(IFO)、シスプラチン(CDDP)、メトトレキサート(MTX)の4剤です。具体的な薬の選択、使う時期にはいろいろな方法がありますが、通常はまず化学療法を行った後に外科的切除を行い、術後にも化学療法を追加します。以前より私たちは、全国の主要施設が参加して行われた臨床試験であるNECO-95Jというプロトコールに従って化学療法を行っていました。この治療により、初診時に転移がなかった場合には、80%以上の5年累積生存率が得られるようになっています。現在は、このNECO-95Jの結果をもとにして更なる治療成績の向上を目指した新たな多施設共同臨床試験であるJCOG0905プロトコールに基づいた治療を行っています。

ユーイング肉腫に対する化学療法

ユーイング肉腫に対する化学療法のキードラッグは、ビンクリスチン(VCR)、アドリアマイシン(DXR)、シクロホスファミド(CPA)、イホスファミド(IFO)、エトポシド(ETP)の5剤です。具体的な薬の選択、使う時期にはいろいろな方法がありますが、通常はまず化学療法を行った後、外科的切除や放射線治療による局所治療を行い、その後にも化学療法を追加します。私たちは、上記5剤を用いて、VDC療法とIE療法を交互に行うプロトコールに従って治療を行っています(VDC-IE療法)。

軟部肉腫に対する化学療法

軟部肉腫に対する化学療法のキードラッグは、アドリアマイシン(DXR)、イホスファミド(IFO)、パゾパニブ、トラベクテジン、エリブリンです。高悪性度軟部肉腫の方には、術前・術後補助化学療法として、アドリアマイシン(DXR)、イホスファミド(IFO)を用いた化学療法(AI療法)をご提案することがあります。また、進行期の方には、従来から使われているアドリアマイシン(DXR)に加えて、ここ数年で新規に使用が可能となったパゾパニブ、トラベクテジン、エリブリンといった薬剤を、病状に合わせて選択し、治療を行っています。現在、アドリアマイシン(DXR)による治療後に進行を認めた軟部肉腫の方を対象とし、パゾパニブ、トラベクテジン、エリブリンを用いた第Ⅱ相臨床試験であるJCOG1802試験が行われています。

転移性骨腫瘍に対する薬物療法

高齢化社会の進行により、がん患者数は増加しています。それに伴い、がんの骨転移(転移性骨腫瘍)が発見されることが多くなってきています。骨に病気が存在しても、通常転移性骨腫瘍は原発腫瘍の専門科(例えば肺がんは呼吸器科)で治療されますが、転移性骨腫瘍は、痛みや骨折、麻痺などを引き起こし、日常生活の質を大きく低下させるため、がんの種類、全身状態、予後を考慮して、手術療法、薬物療法、放射線治療を組み合わせた治療法を検討します。私たちは骨折予防の手術や麻痺予防の脊椎手術に加え、病的骨折の予防を目的として、ビスフォスフォネート製剤やデノスマブ(抗RANKL抗体)による治療を行っています。

用語解説
化学療法 : 化学物質によってがんや細菌その他の病原体を殺すか、その発育を抑制して病気を治療する方法
支持療法 : 最も広く行われている精神療法の一つで、患者の精神的・肉体的なケアのことを指す。不安や緊張、恐怖といった症状を取り除き、心理的な安定と適応の改善をはかる療法
骨肉腫 : 腫瘍細胞が直接、骨を形成する能力を有する悪性腫瘍で、原発性骨悪性腫瘍のうち最も発生頻度の高い腫瘍である
メトトレキサート : 抗がん剤の一種
ユーイング肉腫 : 骨や軟部組織から発生する腫瘍
肉腫 : 悪性腫瘍のうち、線維、血管、骨、軟骨、筋肉、造血組織などから発生するもの