九州大学病院のがん診療

胃がん

放射線治療

胃がんの治療は手術が第一選択であるため、放射線治療は進行がん、再発した胃がんなどに対する補助的な治療として用いられます。具体的には、限局した再発巣に対して、根治を目的とする場合や、胃の病変や転移巣により食物が通らない・痛みがあるなどの症状を有する患者さんに対して、症状緩和を目的とする場合に、放射線治療が行われます。

胃病変に対する放射線治療は、食物等により胃全体が拡張し、病変部が照射範囲からはずれる可能性があるため、胃内容物の少ない空腹時(朝食前)に行います。治療計画用CTにて胃や病変部、放射線障害の発生しやすい周囲臓器の位置を確認し、胃病変が呼吸によって動くことを想定した上で照射範囲を適正に設定します。

2022年4月から当院で稼働した新しい治療装置では治療当日の位置合わせのCTで治療計画を作り直すことで照射範囲をより狭く抑えられるため、副作用の低減が期待できます。線量は30〜50グレイ(放射線量の単位)を10〜25回に分けて照射します。放射線治療の効果を上げるために抗がん剤投与を併用することがあります。

放射線治療の副作用は治療期間中および直後に起こる急性期有害事象と、治療終了数カ月後以降に生じる晩期有害事象に分けられます。急性期有害事象としては、全身倦怠感や胃炎や腸炎による食欲低下、嘔気、嘔吐、腹痛、軟便、下痢などがあります。晩期有害事象には、胃や腸の潰瘍、出血、穿孔、腸閉塞や、腎機能障害や肝機能障害などが起こる可能性がありますが、重篤なものはまれです。

用語解説

CT : コンピュータ断層法。身体の横断断層を撮影する特殊なX線装置
急性期有害事象 : 放射線治療期間中および照射終了1ヶ月程度までに発生してくる障害。
晩期有害事象 : 治療が終了後約3か月以降に発生してくる障害。