九州大学病院のがん診療

胃がん

化学療法

九州大学病院では、胃がんに対する化学療法を行っています。化学療法には大きくわけて、術後に行われる術後補助化学療法、切除不能の進行・再発胃がんに行われる化学療法の2種類があります。

術後補助化学療法

臨床病期Ⅱ、Ⅲ期の胃がんでは、根治手術後に抗がん剤治療を行うことで生存率が向上することが確認されています。S-1は術後1年間服用することで有意に生存率が向上したことが報告されており、そのほか韓国での治療成績を元に、カペシタビンとオキサリプラチンの併用療法を6ヶ月間実施する方法も使用可能となりました。2019年にはⅢ期の胃がん術後の患者さんを対象にS-1にドセタキセルを組み合わせた治療(DS療法)とS-1との比較試験が行われ、DS療法のほうが良好な生存率を示しました。これらの3つの治療法が術後補助化学療法としての標準治療(効果・安全性の面でもっとも優れており一般的になされるべき治療)と考えられており、患者さんそれぞれの病態に応じて治療法を選択し治療を受けて頂いております。

切除不能進行・再発胃がんに対する化学療法

切除不能進行・再発胃がんに対する化学療法は、日本を中心として世界中で多数の臨床試験が実施され、高い奏効率や延命効果が報告されるようになってきました。

現在日本では切除不能進行・再発胃がんの患者さんに対して、がん細胞の表面にHER2蛋白が発現しているかを確認し、治療方針を決定しております。HER2蛋白が発現している場合、HER2に対する抗体薬であるトラスツズマブと化学療法の併用が標準治療となります。組み合わされる化学療法はS-1またはカペシタビンとシスプラチンの併用療法(SP療法、XP療法)が標準治療として選択されます。HER2蛋白が発現していない場合、前述のSP療法、XP療法あるいはTS-1とオキサリプラチンの併用療法(SOX療法)が行われます。S-1とカペシタビンは内服の抗がん剤ですが、胃がんの進行に伴い食事がとれない場合は点滴のみで行えるFOLFOX療法(5-FUとオキサリプラチン)を選択することもあります。

上記の初回治療後の治療については、パクリタキセルに血管新生阻害薬であるラムシルマブを併用する治療法の効果が高いことが明らかとなり、2次治療の標準治療となりました。

また3次治療として免疫チェックポイント阻害剤であるニボルマブならびにTAS-102が有効であることが確認されました。これらの薬剤に加えてイリノテカンが選択肢として挙げられ、当院でも全身状態良好な患者さんに対し使用しています。

当院では、これらの標準的な治療を施行するとともに、より良い治療法の開発のため国内外で行われている施設共同臨床試験に参加したり、当院主導で臨床試験を実施したりするなどして、新たな臨床エビデンスの創出に貢献し続けています。臨床試験に参加するには、事前に病状・体調等の審査を通過する必要があり、すべての患者さんが参加できるわけではありませんが、担当医から案内があった場合には、医学の進歩のため協力をご一考いただけますと幸いです。

化学療法の個別化

胃がんの化学療法では、いくつかの治療薬について、効果や副作用を投与前に予想できるものがあります。上記のように、トラスツズマブに関しては、がん細胞のHER2蛋白検査を行うことで、効果の期待できる患者さんを事前に診断することが行われています。また、イリノテカンの投与前にUGT1A1遺伝子多型検査を行うことで副作用ハイリスク群を事前に診断することも可能となっており、化学療法施行に際し臓器障害などの危険因子を有する患者さんを中心に検査を行っています。

また当院はがんゲノム医療中核拠点病院として、標準治療が効かなくなった患者さんに対してがん遺伝子パネル検査を行い、がんゲノム医療すなわちがん遺伝子の情報に基づいた個別化医療の研究を進めており、胃がんの患者さんにも参加を頂いております。

用語解説

化学療法 : 化学物質によってがんや細菌その他の病原体を殺すか、その発育を抑制して病気を治療する方法
病期 : 疾病の経過をその特徴によって区分した時期。
免疫チェックポイント阻害剤 : 免疫療法のひとつ。がん細胞により抑制されていた免疫機能を活性化させる。
エビデンス : 科学的根拠