九州大学病院のがん診療

胃がん

はじめに

胃がんは我が国において大変頻度の高い悪性腫瘍です。最近では、我が国において胃がんの診断精度や治療技術が向上し、救命可能な胃がんの患者さんが増えていることやピロリ菌の感染率が低下していることなどからがん死亡率は低下傾向となっていますが、未だにかかる患者さんの数が多いがんです。

胃がんの診断方法としてバリウム検査と内視鏡検査が行われています。近年の機器の進歩に伴い内視鏡検査技術が飛躍的に向上し、超音波内視鏡像強調内視鏡などの技術革新がみられており、これらの手法を用いることで胃がんの広がりや深さを詳細に判定できるようになりました。また、CTMRIPETなどの画像解像度の向上も著しく、胃がんの全身への広がりをより正確に診断することも可能となっています。

胃がんの治療方針は、がんの広がりと深さによって大きく異なります。したがって、正確な診断は胃がんの治療方針を決定するためにも非常に重要です。早期であれば内視鏡で病変を切除する内視鏡治療を行います。胃や周囲のリンパ節を切除する手術も低侵襲化が進み腹腔鏡下胃切除術やロボット手術を行い、病状によっては開腹して胃を切除する開腹手術も可能です。抗がん剤も殺細胞性抗がん剤、分子標的薬疫チェックポイント阻害薬と化学療法も種類が増えてきています。また、放射線療法も補助的に用いて治療を行っています。最新の機器・技術および薬剤を用いて正確かつ適切な胃がんの診断と治療を行うことは九州大学病院の使命であります。

九州大学病院では、内科、外科、放射線科、病理部など複数の科が協力して胃がんの診断と治療を包括的に行っています。以下に当院における胃がんの診断・治療の現状、および新しい治療の確立を目指した臨床研究・治験についてお示し致します。また、当院における最近の胃がん診療に関するデータをお示しし、患者さんからの疑問にお答え致します。胃がんの治療を受けようとされている患者さんをはじめとして、皆様への貴重な情報源となるものと思います。

用語解説

超音波内視鏡 : 超音波診断装置を伴った内視鏡
画像強調内視鏡 : 拡大内視鏡と特殊なシステムを併用し、腫瘍の表面の血管構造の観察をしたり染色液を用いて観察することで腫瘍の良悪性の診断を行う方法
CT : コンピュータ断層法。身体の横断断層を撮影する特殊なX線装置
MRI : 強い磁石と磁気を利用して体の内部を検査する機器
PET : がん細胞だけに集積する検査薬を体内に取り込み専用の装置で体を撮影する画像診断法
低侵襲 : 身体にかかる負担が少ない
分子標的薬 : 癌に関与する遺伝子や遺伝子産物を標的とした新しい薬剤による治療法
免疫チェックポイント阻害剤 : 免疫療法のひとつ。がん細胞により抑制されていた免疫機能を活性化させる