九州大学病院のがん診療

卵巣がん

はじめに

卵巣がんは年々増加傾向にあり、婦人科がんの中で最も死亡数の多い疾患です。卵巣はお腹の奥にあり、親指大の大きさのため、症状が出づらく進行がんで見つかることもしばしばあります。また、卵巣がんは非常に多くのタイプ(組織型)に分類されるため、それぞれの組織型に応じた治療法を選択する必要があります。我々は以前より手術療法・化学療法を併用して根治を目指す集学的治療を行ってきております。また、国内の代表的がん治療施設と共同して、新しい抗癌剤療法の開発試験(多施設共同臨床試験)にも多数取り組んでいます。また、進行卵巣がんに対する保険適応下の薬物療法の選択肢もここ数年で飛躍的に増加をしております。以前は一般的に、がんを治すためであれば患者さんの生活の質(QOL:quality of life)を損ねても構わないという考えが支配的でした。当研究室ではかねてよりがんを単に治すだけでなく、患者さんのQOLも損なわない治療法の開発に努めています。九州大学病院では、婦人科、放射線科、病理学部門の専門医が、光学医療診療部、検査部、手術部、薬剤部、看護部などの協力を得て、卵巣がんの診断と治療を包括的かつ集学的に行っています。

用語解説
化学療法 : 化学物質によってがんや細菌その他の病原体を殺すか、その発育を抑制して病気を治療する方法
集学的治療 : 外科的治療、化学療法、放射線療法などの複数の治療方法を組み合わせて行うがんの治療法
QOL : 「生活の質」または「生命の質」。満足のいく生活を送ることができているかを評価する概念