九州大学病院のがん診療

膵がん

はじめに

2018年の我が国の統計によると、膵がんは男性では第4位、女性では第3位に死亡数の多いがんです。膵がんの年間の罹患数と死亡数がほぼ等しく、これは膵がんが早期診断や治療が難しい病気であることを示しています。膵がんをいかに早期に診断し、いかに効果のある治療を行うかが現在の課題であり、九州大学病院ではその課題に積極的に取り組んでいます。

膵がんの発見には腹部超音波US)検査、CT検査、MRI検査といった画像検査が長年にわたり頻用され、その精度は年々向上しています。それに加えて、近年で超音波内視鏡検査EUS)が普及し、1cm以下の小さい腫瘍を検出することが可能となっています。一般に膵癌がみつかる契機であった腹痛・背部痛といった症状が出る前に、膵癌高リスク群やUSでの間接所見などを契機として各種画像評価を行い早期診断できるケースも増えています。また、病理診断も以前より行われていた内視鏡的膵胆管造影検査(ERCP)に加えて、EUSを用いた吸引細胞診(EUS-FNA)により、診断能が向上しています。当院ではこれらの検査を駆使して膵がんの診断を日々行っています。

また、膵がんの治療法として、膵がんを切除する方法(外科手術)、抗がん剤を用いる方法(化学療法)、放射線を用いる方法(放射線療法)などがあります。治療方針は、前述した診断時の検査によりがんの広がり(病期)を正確に把握した後に決定します。病期に加えて個々の患者さんの病状を考慮したうえで最新の機器・薬剤と技術、を提供することが九州大学病院の使命と考えています。

当院では、内科、外科、放射線科、病理学の専門医が光学医療診療部、手術部などの診療部の協力を得て、膵がんの診断と治療を包括的に行っています。以下に最近の当院における膵がんの診断・治療の現状に関するデータをお示しします。膵がんの治療を受けようとされる患者さんにとって貴重な情報を提供できるよう尽力しています。是非ご一読ください。

用語解説

超音波 : 超音波を当て、反射する反射波を画像処理し臓器の状態を調べる検査。
US : 超音波検査。超音波を当て、反射する反射波を画像処理し臓器の状態を調べる検査
CT : コンピュータ断層法。身体の横断断層を撮影する特殊なX線装置
MRI : 強い磁石と磁気を利用して体の内部を検査する機器
超音波内視鏡 : 超音波診断装置を伴った内視鏡
EUS : 超音波内視鏡
ERCP : 内視鏡的逆行性膵胆管造影法
化学療法 : 化学物質によってがんや細菌その他の病原体を殺すか、その発育を抑制して病気を治療する方法
病期 : 疾病の経過をその特徴によって区分した時期