九州大学病院のがん診療

腎盂尿管がん

はじめに

腎盂・尿管は腎臓で作られた尿を集め膀胱へ運ぶ管状の臓器で、その表面は尿路上皮という上皮細胞に覆われています。腎盂・尿管から発生するできもの(腫瘍)は、そのほとんどが尿路上皮から発生する上皮性腫瘍です。そのうち75〜80%は悪性腫瘍で、これらを「腎盂尿管がん」あるいは「上部尿路がん」と呼びます。

腎盂尿管がんは、泌尿器科領域の悪性腫瘍の中でも頻度は低く、尿路上皮がんの4〜5%程度です(尿路上皮がんのほとんどは膀胱がんです)。腎盂尿管がんの20〜50%程度は多発性で、腎盂尿管内での多発のほか、膀胱に同時あるいは後からがんが発生することが知られています。年齢は50〜70歳代に多く、男女比は2〜4:1で男性に多く見られます。

腎盂尿管がんの発がんについては現在も不明なことが多いものの、同じ尿路上皮がんである膀胱がんと共通する発がん因子が知られています。中でも喫煙と尿路上皮がんの発がんに関しては、非喫煙者に比べ喫煙者で発癌リスクが約3倍高くなることが知られています。そのため、腎盂尿管がん、膀胱がんを含め、尿路上皮がん予防のためには禁煙が重要になります。その他、フェナセチンに代表される鎮痛薬、シクロフォスファミドのような抗がん剤と腎盂尿管がん発がんの関係が知られています。

症状として最も多いのは血尿です。ご自分で赤い色の尿に気づいて来院されることがあり、このように血のまじった尿を肉眼的血尿と呼びます。一方で、検診などでの尿検査にて血が混じっていると指摘され発見されることもあり、このような目で見てもわからない血尿を顕微鏡的血尿と呼び、両方を合わせて広い意味での血尿と呼んでいます。その他の症状としては、側腹部痛がみられることがありますが、近年では腹部超音波検査にて水腎症を指摘されて発見されることも多くなってきました。

腎盂尿管がんの治療方針は、がんの広がりと深さによって大きく異なります。したがって、治療方針を決定する際は詳しく検査を行い、検査結果を総合して病状を診断した上で最適な治療法を提示していきます。実際の治療法としては、後に詳しく説明いたしますが手術療法(腎尿管全摘除術)が中心です。その他、抗がん剤を使った全身化学療法や放射線療法などを病状にあわせて選択していきます。

用語解説
超音波検査 : 超音波を当て、反射する反射波を画像処理し臓器の状態を調べる検査
水腎症 : 様々な原因によって尿流を妨げ、腎盂・腎杯の拡張した状態
化学療法 : 化学物質によってがんや細菌その他の病原体を殺すか、その発育を抑制して病気を治療する方法