九州大学病院のがん診療

頭頸部がん

はじめに

頭頸部癌とは

「頭頸部がん」は、胃がんや肺がんのように特定の臓器を示す言葉ではなく、ある一定の領域に発生した癌すべてを示します。頭頸部領域には、鎖骨より上の臓器(舌や咽頭や鼻など)と顔や首全体が入りますが、「頭頸部がん」には、脳腫瘍、眼窩腫瘍、皮膚癌、および頸椎腫瘍は含まれません。
具体的には、図1に示すように、鼻副鼻腔癌、口腔癌、咽頭癌、喉頭癌、唾液腺癌、外耳/中耳癌の総称が「頭頸部がん」となります。また頭頸部領域には、甲状腺もありますが、甲状腺がんは頭頸部がんとしてではなく、甲状腺がんとして別途取り扱われます。

頭頸部領域にある臓器は、人間が生きる上で欠かせない呼吸や嚥下機能や、発声や聴覚というコミュニケーションに必要不可欠な機能、嗅覚や味覚などの日常生活に重要な機能、また社会生活を行う上で重要な顔面形態などが、集中しています。このため、頭頸部領域に癌が発生すると直接QOL(Quality of Life:生活の質)に影響します。

図:日本頭頸部癌学会ホームページより抜粋

頭頸部癌の特徴は?

頭頸部がんは全てのがんのうち5−7%程度と全体数は少ないですが、鼻・副鼻腔癌、口腔癌、咽頭癌、唾液腺癌など種類が非常に多い上、発生原因や治療法、予後が異なるのが特徴的です。

また頭頸部がんは、喫煙と過度の飲酒が発生誘因となっているため、口腔、咽頭・喉頭領域や食道および肺に、癌が重複多発する傾向が高い(10〜30%程度)ことも特徴的です。主な症状としては、口内炎のような症状が治らない(口腔癌)、のどの違和感や飲み込みの悪さ(咽頭癌)、声のかすれや息苦しさ(喉頭癌)、首に痛みのない固いしこりがある(頭頸部がん共通)、などがあります。しかし、頭頸部がんの多くは初期症状が乏しく、初診で約60%が進行がんと診断されることも特徴の一つです(右図)。
このような進行がんが多い頭頸部癌を治療するにあたっては、癌の根治性だけではなく、治療後のQOL維持にも配慮することが重要となります。

用語解説

QOL : 「生活の質」または「生命の質」。満足のいく生活を送ることができているかを評価する概念