九州大学病院のがん診療

皮膚がん

はじめに

皮膚がんは社会の高齢化とともに増加しています。全身を覆っている皮膚や粘膜のすべての部位から発生します。皮膚は目で見える場所ですので、皮膚がんは早期発見、早期治療が可能ながんであるともいえます。ただし、皮膚がんの種類や進行の程度によっては命に関わるような重篤な場合もありますので、時々自分の全身をチェックすると良いでしょう。シミやほくろ、イボなどはだれの皮膚にでもありますが、もし急に大きくなったり、色が変わったり、潰瘍ができたりした場合には皮膚がんの可能性もあります。皮膚科専門医への受診をお勧めします。

皮膚がんにはいろいろな種類があり、治療方針もそれぞれ異なります。日本皮膚科学会、日本癌治療学会のホームページから、皮膚がんの診断・治療の手順や各種治療法の推奨度などが記載された「皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン」を閲覧することができます。現在、悪性腫瘍診療ガイドラインの改定作業が進行中で、九州大学皮膚科もこの改定に参加しています。メラノーマなどいくつかの皮膚がんではすでに最新版の第3版(「メラノーマ診療ガイドライン2019」など)が公開されています。九州大学病院では、このガイドラインに沿った診断・治療を行っています。

皮膚がんの種類

基底細胞癌

最も多い皮膚がんです。高齢者の顔面に、透明感のある小さな黒いイボのような病変として出現することが多いです。転移することはほとんどありませんが、再発することがあるため、十分な範囲の切除を行うことが重要です。

有棘細胞癌

2番目に多い皮膚がんです。長年紫外線を浴びてきた顔面や手背などの皮膚に発生することが多く、かさぶたのついた赤いカサカサした病変(日光角化症:前がん病変)が先に生じ、そこからがんへ進行します。熱傷のあとの瘢痕から発生することもあります。以前はすぐ治っていた瘢痕上の傷が治りにくくなった場合にはがん化の可能性があります。

悪性黒色腫(メラノーマ)

日本人の場合、10万人あたり年間1.5人程度に発症すると言われています。日本人では足の裏に生じることが多く、子どものときにはなかった黒いシミが足の裏に出現して大きくなってくるようなら注意が必要です。早期に発見し、早い段階で適切な治療を行うことがとても重要です。最近では新しい治療薬が開発され、進行期のがんに対しても有効な治療ができるようになってきました。

その他の皮膚がん

乳房外パジェット病は外陰部に生じ、湿疹やたむしとよく似ています。塗り薬で良くならない湿疹やたむしは注意が必要です。血管肉腫は高齢者の頭部にできることが多く、とても悪性度の高い皮膚がんです。頭部のけががなかなか治らず、皮下出血のような紅いシミが広がる場合には注意が必要です。メルケル細胞がんは高齢者の頬に赤いできものを作ることが多く、これも悪性度の高い皮膚がんです。菌状息肉症はゆっくりと進行する皮膚の悪性リンパ腫で、紫外線療法などで治療します。湿疹やアトピー性皮膚炎と間違えることがあります。

用語解説
悪性黒色腫 : 色素細胞(メラノサイト)の癌化によって生じる悪性腫瘍
乳房外パジェット病 : 皮膚に分布しているアポクリン汗腺に由来する皮膚の悪性腫瘍で、乳房以外の場所に発生するもの
肉腫 : 悪性腫瘍のうち、線維、血管、骨、軟骨、筋肉、造血組織などから発生するもの
悪性リンパ腫 : リンパ系組織から発生する悪性腫瘍