九州大学病院のがん診療

原発不明がん

放射線治療

原発不明がんは、いわゆる「転移がん」ではありますが、がんの部位や広がり、組織型によっては、放射線治療や外科的治療といった局所療法が病気の根治や生活の質(QOL)の維持に非常に有効と考えられます。

放射線治療は、原発不明がんの治療において様々な目的で行われます。具体的には、がんの治癒を目指す「根治的放射線治療」、骨転移による痛み等の症状緩和を目指す「緩和的放射線治療」、腫瘍が大きかったり、周りに拡がったりしていてそのままでは切除ができない腫瘍に対して手術に先行して行う「術前放射線治療」、手術を行ったが完全に切除できなかった場合や顕微鏡レベルでのがん細胞が残っている可能性がある場合に行う「術後放射線治療」などの目的があります。

原発不明がんの中で、特に放射線治療が行われることが多いのは、頸部リンパ節転移と腋窩リンパ節転移の場合です。それぞれ、頭頸部がん、乳がんに準じた治療が行われますが、その治療の一環として根治的あるいは術前・術後放射線治療が行われます。
この際、放射線の効果を上げるために抗癌剤の同時併用も検討します。その他の部位でも、転移が限局した領域に留まっている場合には、放射線治療や外科的治療などの局所療法を主体とした根治的治療を検討します。

根治的放射線治療の場合、1日1回、週5回、1回につき1.8〜2Gy(グレイ:放射線量の単位)で、1回の治療に要する時間は10〜15分程度、その中で実際に照射している時間は2〜3分程度で、痛みや熱さを感じることはありません。根治的放射線治療の場合には60Gyあるいはそれ以上の線量、術後放射線治療の場合には50〜60Gy程度、術前放射線治療の場合には30〜40Gy程度の治療が行われます。悪性リンパ等の特に放射線感受性が高い腫瘍は、30〜50Gy程度で局所制御が可能です。一方で、骨転移等に対する緩和的放射線治療は、30Gy/10回、20Gy/5回、8Gy/1回などの線量・回数で治療を行います。

放射線治療前には、準備のための治療計画用CTを撮影し、腫瘍の進展形式および周囲の正常臓器の耐容線量を考慮して照射範囲を決定します。重篤な副作用ができるだけ生じないよう、患者さん毎に処方線量やビームの角度・比率などを調節し、線量分布を最適化しています。

放射線治療の副作用は大きく急性期有害事象晩期有害事象に分けられます。急性期有害事象としては、食欲不振、悪心、嘔吐、全身倦怠感、照射部位の炎症などがあります。晩期有害事象には照射部位の機能障害や壊死、二次がんなどがありますが、重篤なものはまれです。

用語解説

QOL : 「生活の質」または「生命の質」。満足のいく生活を送ることができているかを評価する概念
悪性リンパ腫 : リンパ系組織から発生する悪性腫瘍
CT : コンピュータ断層法。身体の横断断層を撮影する特殊なX線装置。
急性期有害事象 : 放射線治療期間中および照射終了1ヶ月程度までに発生してくる障害。
晩期有害事象 : 治療が終了後約3か月以降に発生してくる障害。