九州大学病院のがん診療

胆道がん

内科的治療

胆道がんに対する治療方針

九州大学病院では、胆道がんに対する治療は最新版の胆道がん診療ガイドラインに基づいて行っています。

胆道がんで、治癒が望める唯一の治療法は外科的切除ですが、切除での治癒が見込めない(切除不能)胆道がんには全身化学療法(抗がん剤治療)、放射線治療が標準治療となり、閉塞性黄疸のコントロール(胆道ドレナージ、ステント留置)と並行して行います。

閉塞性黄疸のコントロール(減黄処置)

胆管がんは黄疸が多くで合併し、胆管炎で全身状態を悪化させることがあります。そのため、全身化学療法前に減黄処置を必要とすることが多くなります。(可能であれば)ERCPを行い十二指腸乳頭部から胆管ステント(プラスチック製または金属製のステント)が留置され、減黄します。ERCPでの処置が困難な際はPTBD(経皮経肝胆管ドレナージ)や、EUS-BD(超音波内視鏡下胆道ドレナージ)を行います。

切除不能胆道がんに対する全身化学療法

現在、胆道がんにおける初回治療の標準療法は塩酸ゲムシタビン+シスプラチン併用療法、塩酸ゲムシタビン+S-1併用療法と塩酸ゲムシタビン+シスプラチン+S-1併用療法です。他に塩酸ゲムシタビン単独療法、S-1(テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤)単独療法が保険治療として可能であり、年齢や全身状態、腎機能などを考慮して初回治療として用いることもあります。標準的な治療が困難で、マイクロサテライト不安定性の高い(MSI-H)場合、ペムブロリズマブが使用できます。以下に標準的な化学療法を示します。

①塩酸ゲムシタビン+シスプラチン併用療法(GC療法
塩酸ゲムシタビン、シスプラチンともに1週間に1回の点滴治療です。1回投与量は塩酸ゲムシタビンが1,000mg/㎡(身長と体重から算出された体表面積当り)、シスプラチンが25mg/㎡となります。まず、吐き気止めの点滴を15〜30分で行った後に、塩酸ゲムシタビン、シスプラチンを投与します。シスプラチンは腎毒性の強い薬ですので、腎臓保護の目的で、抗がん剤などの投与の間に輸液負荷を行い、1回の治療が終了します。1回の治療に要する時間はおよそ3時間です。これを2週間続けて、次の1週間はお休みとし(3週間を1コース)、治療を繰り返していきます。副作用により吐き気止めの追加、1回投与量や治療スケジュールを調節することで、患者さんの負担を軽減し治療を継続していきます。基本的には外来で治療継続となり、検査、診察の結果投与可能と判断されたら外来化学療法室で投与を行います。

②塩酸ゲムシタビン+S-1併用療法(GS療法)
塩酸ゲムシタビンは週に1回2週間続けて投与(通常コース1日目と8日目)、S-1は2週間連日内服し、次の1週間は塩酸ゲムシタビン、S-1ともにお休みとし(3週間を1コース)継続していきます。当院での外来治療は塩酸ゲムシタビン投与日に来院していただき、採血、担当医の診察後に投与可能なら外来化学療法室で塩酸ゲムシタビンの点滴を行います。S-1は担当医の指示通りに内服します。

③塩酸ゲムシタビン+シスプラチン+S-1併用療法(GCS療法)
塩酸ゲムシタビン、シスプラチンともに週に1回(第1日目)の投与、S-1は1週間連日内服(第1日目から第7日目)となります。これらを1週間目に行い、次の1週間はお休みとし(2週間を1コース)、この治療を継続します。1回投与量と点滴方法はGC療法と同様で、塩酸ゲムシタビンが1,000mg/㎡、シスプラチンが25mg/㎡となり、点滴治療に要する時間はおよそ3時間です。

④塩酸ゲムシタビン単独療法
塩酸ゲムシタビンのみの、1週間に1回の点滴治療です。1回投与量は1,000mg/㎡となります。まず予防的に吐き気止めの点滴を15〜30分で行います。続いて塩酸ゲムシタビンの点滴を30分で投与し、最後に生理食塩水を点滴します。1回の治療に要する時間はおよそ1時間前後です。これを3週間続けて投与し、次の1週間はお休みとして(4週間を1コース)繰り返していきます。採血、担当医の診察後に投与可能なら外来化学療法室で行います。

⑤S-1単独療法
S-1は飲み薬で、体表面積や腎機能から投与量が決まり、朝夕2回に分けて食後に内服します。通常はこれを28日間(4週間)連日内服し、その後14日間(2週間)はお休みとなります。この6週間を1コースとして繰り返していきます。患者さんによっては、14日間(2週間)連日内服し、その後7日間(1週間)はお休みする方法で、3週間を1コースとして繰り返すこともあります。

全身化学療法の副作用

副作用は個人によって差がありますが、代表的なものを以下に示します。

共通する副作用は嘔気、嘔吐、便秘、下痢などの消化器症状、倦怠感、食欲不振、一時的な発熱、皮疹等が代表的です。これらに対しては多くの場合、内服薬や注射薬での対症療法で対応が可能ですが、抗がん剤の減量や中止が必要なことあります。このほかに、血液を造る骨髄の機能が低下する骨髄抑制(白血球減少、貧血、血小板減少など)や肝障害、腎障害があります。また、頻度は多くありませんが注意するべき副作用として、間質性肺炎があります。間質性肺炎が起こると命に関わることもあり、投薬中止、酸素投与やステロイド治療を考慮しなければなりません。息切れや空咳が続く場合には担当医にご連絡ください。他の抗がん剤で多くみられる脱毛はこれらの薬剤では頻度はそれほど高くなく、起こっても軽いといわれています。

その他、S-1に特徴的な副作用として、口の粘膜が荒れる口内炎、爪や皮膚が黒ずんでくる色素沈着などが挙げられます。口内炎に対しては外用薬の塗布や痛み止めを含んだうがい薬などで対応します。色素沈着に対しては、それ自体で体調に悪影響を及ぼすことはないので特に対処はしませんが、特に気になる場合は担当医にご相談ください。

また、シスプラチンの特徴的な副作用としては、嘔気・嘔吐、高度な骨髄抑制、腎障害が挙げられます。腎障害を予防するために大量の点滴を投与する必要があります。

副作用に対しては、早期発見、早期治療、抗がん剤の休薬・中止にて対応しています。ここに挙げていない予測できない副作用が現れることもありますので、何か気になる症状がありましたら、遠慮なく担当医にご相談ください。

用語解説

化学療法 : 化学物質によってがんや細菌その他の病原体を殺すか、その発育を抑制して病気を治療する方法
閉塞性黄疸 : 肝外胆道の閉塞によって起こる全ての黄疸をいい、胆汁が血中へ逆流して起こる黄疸を閉塞性黄疸という
ERCP : 内視鏡的逆行性膵胆管造影法
超音波内視鏡 : 超音波診断装置を伴った内視鏡
GC療法 : 塩酸ゲムシタビン+シスプラチン併用療法
骨髄抑制 : 抗がん剤などによって骨髄内の正常血球細胞の産生が障害されること
間質性肺炎 : 肺にある間質と呼ばれる組織に炎症を生じる疾患の総称