九州大学病院のがん診療

乳がん

放射線治療

乳がん領域における放射線治療には、大きく分けて下記の3つの目的があります。

①乳房温存術後の、温存乳房への放射線治療
②進行乳がんに対する乳房切除後の放射線治療
③転移、再発乳がんに対する放射線治療

九州大学病院には、これらの治療に対応できる施設基準を満たした放射線治療装置と、放射線治療専門医が在籍しており、外科での手術療法、化学療法と併せて、集学的な治療を受けることができます。最初に、上記の3つの治療について説明し、最後に放射線治療に伴う副作用について説明します。

① 乳房温存手術後の、温存乳房への放射線治療

乳房温存手術後、温存乳房への放射線治療を行うことにより乳房内再発が約1/3に減少することがわかっています。妊娠中や膠原病にかかっている、既に同側の乳房に放射線を当てたことがある等の特殊な事情がある場合を除き、原則として乳房温存手術を受けられた患者さん全員に、術後放射線治療を推奨しています。

具体的な治療手順としては、手術終了後、手術創部が治癒し、摘出標本の病理診断結果が判明した後(術後補助化学療法が必要な場合は化学療法終了後)、放射線科を受診し、説明と治療の準備を行います。通常は温存した乳房全体に、総線量50グレイ(グレイとは放射線量の単位)を合計25回に分けて(1日1回、平日5日間、5週間)、照射します。1回の照射時間は1分程度で通院の時間以外は通常の生活が可能です。近年、治療期間を短くしたスケジュール(42.56グレイ、16回)でも治療成績や副作用が同等ということがわかってきており、50歳以上、乳房温存手術後のpT1-2N0、全身化学療法を行っていない場合には選択肢としてご紹介しています。さらに、病理診断結果によっては、切除前に乳がんの病巣があった場所に5回程度の追加照射(ブースト照射)を行っています。

② 進行乳がんに対する乳房切除後の放射線治療

乳房切除術(乳房を全て切除してしまう手術)の後でも、わきのリンパ節に4個以上転移が見られた、腫瘍が大きかった(5cm以上)など、胸壁やリンパ節再発の危険性が高い場合に、術後放射線治療が推奨されます。

治療は、手術終了後、手術創が治癒し、摘出標本の病理診断結果が判明した後(術後補助化学療法が必要な場合は化学療法終了後)、放射線科を受診して頂き、説明と治療の準備を行います。腫瘍があった側の胸壁と鎖骨周囲に総線量50グレイを25回(1日1回、平日5日間、5週間)に分けて照射します。1回の照射時間は1分程度で通院の時間以外は通常の生活が可能です。

③ 転移、再発乳がんに対する放射線治療

乳がんの脳転移、骨転移、局所再発(胸壁、リンパ節)やその他の転移巣に対して、放射線治療を行う場合があります。

脳転移に対しては2つの放射線の照射方法があり、1つは脳全体に放射線をあてる全脳照射、もう1つは病変のみに放射線を絞る定位照射です。九州大学病院では定位照射はノバリスと呼ばれる装置を使っています。全脳照射の場合、病巣の状況に合わせて1回線量3グレイを10回程度照射します。定位照射の場合は通常1〜5回に分けて照射します。

骨転移に対しては、ホルモン療法、抗がん剤治療などの全身療法が主体になりますが、骨折の危険性がある場合、痛みや麻痺を伴う場合は、放射線治療の適応となります。状況に合わせて総線量20〜40グレイを5〜20回に分割して照射します。

局所再発(胸壁、リンパ節)やその他の転移巣に対しても、放射線治療を行ったほうが良いと考えられる場合、総線量30〜50グレイ程度を5〜25回に分割して照射します。

 

手術後の乳房、胸壁に行う照射線治療に伴う副作用として、照射部位に軽度の皮膚炎が見られますが、治療終了後には改善します。その他、全身倦怠感、悪心など生じることがあります。治療後しばらくして放射線肺炎や肋骨骨折が起こることがありますが、まれです。脳転移に対する全脳照射の場合は、倦怠感、悪心、嘔吐、食欲不振等の副作用が生じる場合もありますが、治療終了後2週間程度で改善することがほとんどです。全脳照射により一旦頭髪は抜けますが、数カ月後にまた生えてきます。

用語解説
化学療法 : 化学物質によってがんや細菌その他の病原体を殺すか、その発育を抑制して病気を治療する方法