九州大学病院のがん診療

口腔がん

内科的治療

外科的な切除以外の治療法としては、放射線治療や内科的治療があります。内科的治療には化学療法や免疫治療があります。
化学療法は投与の方法により、以下の3つに大別されます。

ⅰ)静脈内投与
ⅱ)動脈内投与
ⅲ)内服投与

ⅰ)静脈注射は腕などの静脈から抗がん剤を全身投与する方法で、進行がんの手術前に行う「導入化学療法」や「術前化学放射線療法」と手術後に「術後補助療法」として行う場合があります。現在では、導入化学療法や術前化学放射線療法はあまり用いることはなく、術後補助療法として行っています。薬剤としては白金製剤(プラチナベース)を含む多剤併用療法が用いられており、放射線治療との併用により効果が高まります。
また、比較的短い間隔で繰り返すことができることから、当院では外来化学療法室を使って外来通院治療としても考えることができます。
なお、2012年末に分子標的薬のセツキシマブが、2017年3月に免疫チェックポイント阻害薬としてニボルマブが、2019年12月にはペムブロリズマブが頭頸部癌に対して認可されました。
再発転移頭頸部癌は再発・病態進行がプラチナベースの全身化学療法や化学放射線療法の施行後6ヶ月以内・以降であるかによってプラチナ抵抗性・感受性として分けられて、プラチナ抵抗性であればニボルマブを標準治療として用いて、プラチナ感受性であればペムブロリズマブ単独あるいは化学療法との併用療法を用います。現在、特に免疫チェックポイント阻害薬などを使用する治療では、耳鼻咽喉科・頭頸部外科の医師とともに行っています。

ⅱ)動脈注射は略して「動注」と呼ばれる方法で、がんが栄養をもらっている動脈(支配血管)にカテーテルを挿入して抗がん剤を与えようという考え方です。近年はカテーテルや手技の向上などにより、より細い動脈(それだけがんに近づくことが可能)に到達できるようになってきており、超選択的動注療法あるいは選択的動注療法と呼ばれます。それによって、がん以外の組織に抗がん剤が及ぶことをできるだけ少なくする方法です。
口腔外科では口腔がんに対する動注は、進行がんや再発がんで手術が難しい症例やまずはがんの勢いを抑えたい場合に用いています。

ⅲ)抗がん剤内服による治療は、注射の痛みなどがなく、継続するのに適した治療法です。手術療法を考えない場合に、放射線治療と併用して用いるか内服治療単独で用いる方法などがあります。薬剤としてはTS-1、UFTなどが使用可能です。

用語解説

化学療法 : 化学物質によってがんや細菌その他の病原体を殺すか、その発育を抑制して病気を治療する方法
化学放射線療法 : 抗がん剤と放射線を組み合わせて行うがんの治療方法
分子標的薬 : 癌に関与する遺伝子や遺伝子産物を標的とした薬剤による治療法。
カテーテル : 体腔や消化器などの体内容物の排出・採取、薬物の注入目的に使用される細い管